タイトル | 表面流去型人工湿地による酪農雑排水浄化 |
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担当機関 | 北海道立根釧農業試験場 |
研究期間 | 1989~2002 |
研究担当者 |
甲田裕幸 三枝俊哉 三木直倫 酒井治 宝示戸雅之 木場稔信 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 室内モデル試験によれば人工湿地の浄化能は滞留日数 5 日では低下する。投入水濃度が高まると流出水の濃度と除去率がともに上昇する。また、人工湿地に植物を移植 しないと流出水の水質は時間とともに悪化する。野外試験における表面流去型人工湿地の 全窒素および全リン除去率はそれぞれ 62~82%および 76~87 %である。 |
キーワード | 人工湿地、酪農雑排水、浄化、窒素、リン |
背景・ねらい | 酪農生産が水系を汚染する危険性が指摘されており、ミルキングパーラーの洗浄水など雑排水についても対策技術が必要とされている。本試験では人工湿地を利用した酪農雑 排水浄化システム設計の基礎資料を得ることを目的とする。 |
成果の内容・特徴 | (室内モデル試験:幅 39.7cm、長さ 59.7cm、水深 10cm表面流去型人工湿地を 3 個連結) 1. 屋内に設置した表面流去型のモデル人工湿地に汚水として牛乳希釈水を投入した場合、 5 日まで滞留日数を短縮すると流出水中の全窒素、全リン濃度が上昇し除去率は低下する。 しかし、滞留日数を 15 日より長くしてもそれ以上流出水濃度は低下せず、除去率も高ま らない(図 1)。 2.投入する牛乳希釈水の全窒素を平均 22.1 mgN/L から 77.7 mgN/L へ、全リン濃度を平均 7.7 mgP/L から 19.9 mgP/L へ上げると流出水中の全窒素および全リン濃度は上昇する。 一方、窒素の除去率は本試験の濃度の範囲では投入した牛乳希釈水の濃度が高いほど高ま る(図 2)。 3.全窒素濃度を一定としてスラリー希釈水および牛乳希釈水を投入した場合では、流出水 中の全窒素および全リン濃度はスラリー希釈水を用いた方がやや高い傾向にあるが、その 差は小さく、いずれの汚水に対しても類似した浄化能を発揮し得ると期待できる。 4.人工湿地に植物を移植しないと、流出水中の全窒素および全リン濃度は経時的に上昇す る。したがって、長期間の利用を想定すると、植物を栽培した方が望ましい(図 3)。 (野外試験:幅 3m、長さ 8m、水深 0.25mの表面流去型人工湿地を 3 個連結、2001 年は 60 日、2002~2003 年は 30 日滞留、ガマ移植条件) 5.根釧農試牛舎雑排水を沈殿槽で沈降させ、この上澄み(年度ごとの平均全窒素濃度 45.2 ~55.4mgN/L、平均全リン濃度 7.7~17.5mgP/L)を表面流去型人工湿地に投入した結果、 流出水の全窒素および全リン濃度はそれぞれ平均 3.5~10.9mgN/L および 0.7~2.7 mgP/L と、明らかに低下する(図4)。このときの全窒素および全リン除去率はそれぞれ62~82% および 76~87 %となり、投入水の水質が大きく変化しても流出水の水質はそれほど変動 しない(図 4)。 |
成果の活用面・留意点 | 表面流去型人工湿地を用いた酪農雑排水の浄化システムの基礎数値となる。 本情報は非凍結期間の試験結果である。 |
カテゴリ | 乳牛 |