タイトル |
風の蒸散抑制作用を利用した、送風方式による野菜接ぎ木苗養生装置の開発 |
担当機関 |
奈良県農業試験場 |
研究期間 |
1996~1997 |
研究担当者 |
信岡 尚
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発行年度 |
1996 |
要約 |
高相対湿度で光のある環境下では風が蒸散を抑制する作用を利用し、果菜類の新しい接ぎ木苗養生装置を開発した。この装置でトマト・キュウリの接ぎ木苗を養生したところ、従来の方式に比べて湿度および高温時の温度環境が改善され、その結果、活着率および苗質が向上した。
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背景・ねらい |
大量の接ぎ木苗の養生を、自然光下で低コストかつ安定的に行えるものとして、先に底面給水マットを利用した簡易な養生装置の開発を行った。この装置の特長は底面給水マットによって養生室内の湿度を高く保てる点にあるが、日射量の急激な変動などの影響を小さくするために遮光を強めに行う必要があることや、高温期には養生室内の気温が非常に高くなるなどの欠点があった。そこで、風による蒸散抑制効果を利用して、接ぎ木苗の周年・安定生産が可能となる新たな養生装置を開発した。
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成果の内容・特徴 |
- 幅90cm、長さ6m、高さ80cmの育苗ベンチの上部に小トンネルを設置し、ベンチ下部および上部(小トンネル部分)全体をビニルフィルムおよび遮光資材で密閉する。図1のようにベンチ下部に換気扇および散水用ノズルを設置し、ベンチ下部で加湿された空気をベンチ上部および下部間で循環させる。送風は日の出から日没まで行い、この間5~10分ごとに30秒程度、ノズルから散水する。風速は苗の付近で約1~1.5m/sとなるように調節する(図1)。遮光率は7~8月の高温期は90~95%、春・秋期は70~80%程度とする。
- この装置で養生したトマトおよびキュウリの接ぎ木苗は、同程度の遮光(遮光率77%)を行った底面給水方式での苗に比べて穂木の萎凋が少なく、活着率が高い(表1、表2)。強い遮光(同95%)を行った底面給水方式での苗に比べると、活着率は同程度であるが、葉数や地上部重および根重が大きく、草丈は逆に小さくなり、徒長のない良好な苗質となる(表2)。
- 強制的な加湿と送風により、本装置内の環境は底面給水方式に比べて相対湿度が高く、気温が低く保たれる(表2、表3)。特に高温期では、養生室内の気温の低下により、活着率が大幅に向上する(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 湿度保持のため、装置の密閉を確実に行う。
- 苗に水滴が付着しないよう、散水ノズルはベンチ下部の送風機寄りの位置に設置する。
- 風速が大きいと穂木が脱落する恐れがあるので、風速は1~1.5m/s程度とする。
- 送風機の風上側に換気口を設けて少量の外気を導入すると、潜熱によって高温期の冷房効果が期待できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
育苗
きゅうり
接ぎ木
低コスト
トマト
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