タイトル |
細胞内脂肪局在化処理によるウシ体外受精由来16細胞期胚の凍結後の生存率向上 |
担当機関 |
兵庫県立中央農業技術センター |
研究期間 |
1997~1998 |
研究担当者 |
冨永敬一郎
|
発行年度 |
1998 |
要約 |
ウシ体外受精に由来する16細胞期胚の緩慢凍結では、2細胞期において遠心処理をすると、胚盤胞期への発生率が向上し、品質も高い。
|
背景・ねらい |
ウシの胚(受精卵)クローンを得るために、16~64細胞期胚の割球が用いられている。ドナー割球として、1分割前の8~16細胞期を凍結し、融解後1回分割させた32~64細胞期胚の割球を核移植に用いれば、再構築胚の正常性は高まると考えられる。しかし、この時期のウシ胚は細胞内脂肪が多く、特に体外受精由来胚では64細胞期に発育していても、緩慢冷却法で生存胚を得ることは非常に難しい。そこで、ウシ体外受精由来初期胚の凍結に有効なリノール酸アルブミン(LAA)を添加したCR1aa培地を用いるとともに、種々の発育ステージでの遠心処理により、胚の細胞内脂肪を局在化させた16細胞期胚を凍結し、融解後の胚盤胞への発生能を検討した。
|
成果の内容・特徴 |
- 体外受精後の胚培養はUllahら(1997)の方法に従った。即ち、受精後72時間目まで3mg/ml脂肪酸フリーBSA 添加CR1aa液、5日目まで5%ウシ胎子血清(FCS)添加CR1aa液で培養し、同液に1mg/mlグルコースを添加して7日目まで卵丘細胞と共培養した。
- 1細胞期、2細胞期および8細胞期胚を6μg/ml サイトカラシンDを含む20%FCS添加ダルベコPBS(D-PBS)に10分間浸漬後、100μlの同液を含む1.5mlマイクロチューブに入れ、15,500gで7分間遠心した。
- 細胞内脂肪顆粒の分布によって、受精後4日目まで発生させた16細胞期胚を形態的に大部分除去と少量除去の2群に分けた(図)。20%FCS添加D-PBSに1.5M エチレングリコールと0.2M トレハロースを添加した凍結媒液を用い、3段階で添加後、-6℃で植氷して、-30℃まで0.3℃/分で冷却し、液体窒素に浸漬して凍結した。
- 10秒間エアーソーイング後、30℃温湯にストローを浸漬して融解し3段階で凍結保護物質を除去した。新鮮区と同じ方法で培養して7日目の胚盤胞を数え、免疫2重蛍光染色法によって、内部細胞塊細胞数と栄養膜細胞数とを別々に計測した。
- 2細胞期胚での遠心による細胞内脂肪の局在化処理は、16細胞期への発生率を低下させず、細胞内脂肪が大部分除去された16細胞期胚を多く得ることができる(表1)。
- 凍結融解した16細胞期胚の胚盤胞への発生率は、2細胞期胚での遠心処理により細胞内脂肪が大部分除去された場合に無遠心胚より高く、細胞数や細胞構成では無遠心新鮮胚とに有意な差はみられない(表2)。
|
成果の活用面・留意点 |
経膣採卵により得られた体外受精胚に応用できる。また、受精後72時間までの培養には、血清を無添加とし、脂肪酸フリーBSA およびLAAを添加したCR1aa液を用いる。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
カテゴリ |
|