タイトル |
中国中山間地域の肉用牛繁殖・稲作複合営農における里地放牧導入の経営的効果 |
担当機関 |
中国農業試験場 |
研究期間 |
1999~2002 |
研究担当者 |
小山信明
千田雅之
谷本保幸
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発行年度 |
1999 |
要約 |
肉用牛繁殖・稲作複合営農の多い中国中山間地域において、里地放牧の導入は、夏季の農作業時間を40~73%も削減でき労働軽減に大きく貢献し、複合営農の1日当たり労働報酬額を高め、子牛価格低下に対する肉用牛飼養の持続性に寄与する。
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背景・ねらい |
和子牛価格の低迷下、肉用牛経営の担い手の多くが高齢者であり、耕作放棄地等の遊休農地が広がる中国中山間地域では、耕作放棄地等を含む里地への放牧による肉用牛経営の省力化と労働生産性の改善が期待されている。そこで、肉用牛繁殖・稲作複合営農における農作業日誌をもとに、放牧導入による労働時間や経費及び労働生産性等の変化を、周年舎飼時と比較し定量的に把握し、放牧の経営的効果を具体的に明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 事例経営は経営主(58歳、兼業)とその妻の労働により稲作46aと繁殖和牛4頭を飼養する。平成10年から放牧を開始し現在、約100a(調査期間の放牧利用面積は66a)の里地(内牧草採草兼用地16a、他は野草植生)に3月下旬から11月上旬まで、天候等により放牧時間を制限しながら、分娩前後約2ヶ月間を除きすべての繁殖牛の放牧を行う。
- 放牧導入により、年間の給餌・掃除及び敷料調達の労働時間は約26%、野草等の粗飼料調達に関わる労働時間は約45%、家畜飼養と稲作を併せた総農作業時間は約22%減少した(表1)。とくに、労働強度の高い農作業の多い4~9月の1日当たり労働時間が40~73%に著しく軽減したことは注目される(図1)。
- 肉用牛飼養に要する労働を除く経営費は、繁殖牛の濃厚飼料費、削蹄費、疾病減少による診療衛生費、及び草刈り作業の減少による燃料費や替歯代が1頭当たり約19千円節約された。一方、電気牧柵等の資材費や疾病予防の衛生費が新たに生じ、両者を相殺した費用の減額は、1頭当たり約12千円である(表2)。
- 肉用牛繁殖・稲作複合営農の1日当たり労働報酬額は、周年舎飼時は子牛価格が36万円を下回ると水稲単作経営よりも低くなるが、放牧を導入した場合は子牛価格が29万円まで低下しても水稲単作経営を上回る労働報酬が得られると試算され、放牧導入は価格低下に対する肉用牛部門の持続性を強める(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 耕作放棄地等を含む里地を対象に稲作肉用牛複合経営が放牧を行う際の参考となる。
- 放牧地面積1ha当たり570日・頭の密度の放牧を行った放牧初年目の実績である。また、事例の放牧地は元々畑地であり排水改善が不要であったこと、牧柵を竹材等の自給資材を活用するなど経費を低く抑えていることに留意する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
経営管理
削蹄
省力化
中山間地域
肉牛
繁殖性改善
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