タイトル |
合鴨稲作の経済性と作付規模を規定する要因 |
担当機関 |
中国農業試験場 |
研究期間 |
2000~2001 |
研究担当者 |
井上憲一
棚田光雄
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発行年度 |
2000 |
要約 |
合鴨稲作は、同一農家内で比較すると、減農薬稲作よりも経済性が高い。また、作付規模が大きく実践年数の多い方が経済性が高い。しかし、合鴨稲作特有の人力作業による労働ピークと圃場利用上の制約が、作付規模を規定している。
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背景・ねらい |
農薬・化学肥料を一切使わない農法の一つである合鴨稲作が、今後より広く普及するためには、経済性と作業技術の特性に関するより詳細な検討が必要である。そこで、山口県K町の合鴨稲作農家(60歳前後の夫婦2名の労働力、実践6年目)を調査対象として、(1)同一農家内の条件のもと、同一規模の合鴨稲作と減農薬稲作の経済性、および作付規模・実践年数が異なる合鴨稲作の経済性をそれぞれ比較するとともに、(2)合鴨稲作の作付規模を規定する技術的な要因を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 同一農家内の同一規模条件(1番農家・80a)で比較すると、合鴨稲作は減農薬稲作(除草剤使用1回、本田殺虫・殺菌剤使用3回以内)よりも、投下労働時間と物財費が高くなるものの、相対的に高い米価水準と合鴨肉販売があることにより、より高い粗収益が実現され、経済性(特に所得)が高い(表1)。
- 同一農家(2番農家)における6年目(92a)と1年目(28a)の合鴨稲作を比較すると、作付規模が大きく実践年数の多い6年目の方が経済性(特に1日当たり家族労働報酬)が高い(表1)。その主な要因としては、(1)合鴨稲作独自の投下労働時間と物財費に対するスケール・メリットの発現、(2)作業の習熟度の向上による投下労働時間の減少と単収の増加、(3)経験年数の増加による、より安価な雛や飼料などの調達、が挙げられる。
- 以上のような合鴨稲作の作付面積の拡大に一定の制約があるのは、田植え後すぐから合鴨を水田に放鳥するまでの10日間前後の期間に、合鴨稲作に特有の人力作業による高い労働ピークが形成され(表2)、作付規模が制限されるからである。この農繁期の直前に稲作本来の農繁期があることや、この農繁期においても他の稲作作業(水管理など)が重なることなどを勘案すると、1~3番農家の場合では、1ha位が合鴨稲作の上限規模となる。
- 合鴨稲作には、通作距離や立地条件などのさまざまな圃場選択項目が存在するため(表3)、合鴨稲作に利用できる圃場は限られる。合鴨稲作の作付面積の拡大を図る場合、こうした圃場利用上の制約が伴い、作付規模が規定される。
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成果の活用面・留意点 |
個々の労働力条件や圃場条件などによって、作付面積の上限規模は異なってくる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
肥料
病害虫
除草剤
水田
農薬
水管理
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