タイトル | 大容量検体からのイネもみ枯細菌病菌の高精度検出法 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 | 2001~2003 |
研究担当者 |
小原達二 畔上耕児 |
発行年度 | 2001 |
要約 | 1リットルの田面水および10,000粒のイネもみからろ過集菌した細菌群を、イネもみ枯細菌病菌に選択的な液体培地を用いて増菌した後、PCR法を行うことにより、本菌を高精度に検出できる。 |
キーワード | 大容量検体、イネもみ枯細菌病菌、高精度検出、ろ過、増菌、PCR |
背景・ねらい | 農業生態系におけるイネもみ枯細菌病菌をはじめとする植物病原細菌の挙動については、未解明の部分が多い。これは、従来の細菌検出法が少量検体を対象としたもので、大容量検体からの精度の高い検出が困難であったことに主因がある。そこで、大容量の田面水・農業用水及びイネもみからイネもみ枯細菌病菌を高精度に検出する方法について検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 大容量の検体(1リットルの田面水および10,000粒のイネもみ)からイネもみ枯細菌病菌を高精度に検出できる方法を考案した(図1)。これは、ろ過法及び増菌法を用いた前処理とPCR法とを組み合わせたものであり、検体液をろ過しメンブレンフィルター上に集菌したうえでフィルターごと液体培地に入れて増菌を行うことにより、これまでPCR法で扱うには不可能であった大容量検体の処理が可能となる。 2. イネもみ枯細菌病菌を含まない農業用水に、本細菌を任意の濃度で混入した人工汚染水を作製し、本法に供すると、細菌濃度4.1 cfu/リットルの人工汚染水からでも本細菌に特異的な372bpの増幅断片が検出される(図2)。一方、前処理を行わずにPCR法で検出する場合の検出限界濃度は10の7ないし8乗cfu/リットルである。 3. 実際に、本細菌によるもみ枯症が発症する水田田面水1リットルを本法に供すると、本細菌が恒常的に検出され(図3)、また、同時に本法における増菌後の液から免疫学的に集めた細菌群の中からは、本細菌の生菌が分離される。 4. さらに、イネもみ約10,000粒を滅菌水300ミリリットル中で5分ないし10分間超音波処理し本法に供すると、10,000粒の健全もみに対し本病の発病もみを1粒混ぜたものからでも、本細菌が恒常的に検出される(図4)。 5. 本法における増菌は、寒天無添加のS-PG(対馬ら、1986)を1/10の濃度にした液体培地を用い35℃で40時間振とう培養、または寒天無添加のCCNT(Kawaradani et al.,2000)を1/5の濃度にした液体培地を用い35℃で20時間振とう培養のいずれかの条件で実施する。 6. 本法におけるPCR法には、イネもみ枯細菌病菌rRNA遺伝子のITS領域の372bpを特異的に増幅するプライマーセット(PGF1及びPGR1、澤田、未報告)を用いた。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本法を用いて田面水・農業用水、イネもみ、雑草等からイネもみ枯細菌病菌の検出を試みることで、本菌のさらなる生態解明が可能となる。 2. イネもみ枯細菌病の防除、発生予察を目的に、本法を種子検査及び農業用水の汚染状況の把握等に利用できる可能性がある。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 病害虫 雑草 水田 防除 もみ枯細菌病 |