感染性クローンを用いたトウガラシマイルドモットルウイルス弱毒候補株の作出法

タイトル 感染性クローンを用いたトウガラシマイルドモットルウイルス弱毒候補株の作出法
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2001~2003
研究担当者 一木珠樹
大村敏博
津田新哉
萩原恭二(特別研究員)
発行年度 2003
要約 感染性クローンを用いて解析したトウガラシマイルドモットルウイルスの既存の弱毒株における弱毒性決定部位を強毒株に導入することにより、有効な弱毒候補株を効率的に作出できる。
キーワード 感染性クローン、ピーマン、トウガラシマイルドモットルウイルス、弱毒株
背景・ねらい
 ピーマンモザイク病の病原ウイルスであるトウガラシマイルドモットルウイルス(Pepper mild mottle virus ; PMMoV)には、3種の弱毒株があるが、これらはいずれも高温下で軽いモザイクが出ることや現在最も広く栽培されているL3抵抗性遺伝子を持つピーマンに感染できないという問題をもっており、これらの問題を克服した新たな弱毒株が求められている。弱毒株の作出にはこれまで紫外線照射、高温処理などが行われてきたが、これらの方法は変異が無作為に誘導されるため有望な株の選抜に多くの時間と労力が必要であった。そこで既存の弱毒株の遺伝子組成並びにその機能を感染性クローンを用いて解析し、弱毒性に関与する変異を強毒株に導入することによって効率的な弱毒株の作出を試みる。
成果の内容・特徴 1.
北海道(Pa18)、千葉(C-1421)及び大分(TPO-2-19)で作出された既報の3弱毒株は、強毒株(PMMoV-J、P1.2)と比較してそれぞれ10、1及び12箇所で塩基変異が見いだされる。
2.
弱毒株に見いだされた塩基の変異を強毒株の感染性cDNAクローンに導入後ピーマンに接種し、その病徴によって特定した弱毒性に関与する遺伝子変異箇所はいずれもアミノ酸置換を伴う変異で、Pa18では3箇所、C-1421では1箇所、TPO-2-19では3箇所存在する。
3.
2.で特定した、Pa18とC-1421のアミノ酸置換を伴う塩基の変異を、L3抵抗性遺伝子を持つ現在の主力栽培品種に感染できる強毒株(PMMoV-Ij、P1.2.3型)の感染性クローンに導入して作出したTPa18chはL3抵抗性遺伝子を持つ品種に感染できる。
4.
既存の弱毒株はわずかに病徴を出現するのに対し、TPa18chを接種したピーマンでは病徴が認められなかったことから、弱毒性に関与する遺伝子の変異には相乗効果があると考えられる。
5.
TPa18chをピーマンに接種すると、3週間後には干渉能が発揮され、後から強毒株(PMMoV-J)を接種しても1ヶ月以上病徴が認められない。
成果の活用面・留意点 1.
これらの弱毒候補株は既存の弱毒株よりもさらに病徴が弱いため、高温下無病徴である可能性が高い。
2.
弱毒性に関与する遺伝子変異を感染性クローンを用いて複数組み合わせ、新たに弱毒候補株を作出する試みは、植物ウイルスでは世界初であり、感染性クローンが構築されたすべてのウイルスの効率的な弱毒株作出及び改良に応用できる。
カテゴリ 病害虫 植物ウイルス 抵抗性遺伝子 とうがらし ピーマン 品種

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