タイトル | バキュロウイルスの封入体タンパク質とEGTの遺伝子情報を決定する共通プライマー |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 | 2000~2002 |
研究担当者 |
後藤千枝 |
発行年度 | 2003 |
要約 | チョウ目害虫の天敵であるバキュロウイルスの既知の遺伝子情報をもとに設計した共通プライマーを用いることによって、ウイルスの分類同定に必要な封入体タンパク質遺伝子とエクジステロイドUDP-グルコシルトランスフェラーゼ(EGT)遺伝子の塩基配列を効率的に得ることができる。 |
キーワード | バキュロウイルス、共通プライマー、PCR、直接シーケンス、分類同定 |
背景・ねらい | 核多角体病ウイルス(NPV)と顆粒病ウイルス(GV)はバキュロウイルス科に属するチョウ目害虫の防除素材であり、その分類・同定には遺伝子の塩基配列を明らかにする必要がある。ウイルスゲノムの遺伝子情報を得るには、ベクターを用いてDNAライブラリーを作成し、塩基配列決定を行う方法が一般的であるが、全ゲノムの解析に多大な労力と時間がかかる。そこで、バキュロウイルス科の分類上最も重要な指標の一つである封入体を構成するタンパク質(NPVのポリヘドリン、GVのグラニュリン)遺伝子と宿主幼虫の脱皮ホルモンを不活性化する酵素であるエクジステロイドUDP-グルコシルトランスフェラーゼ(EGT)遺伝子を増幅するための共通プライマーを設計し、両遺伝子の検出と塩基配列決定の効率化を図る。 |
成果の内容・特徴 | 1. 公開データベース(GenBank)から入手したバキュロウイルスの塩基配列ならびにアミノ酸配列をもとに設計した共通プライマーは表1に示す通りである。 2. 表1のプライマーから正と逆を1種類ずつ組み合わせて用い、アニーリング温度を37℃あるいは45℃に設定してPCR反応を行うことで、遺伝子情報が未知である複数のバキュロウイルスから目的遺伝子のDNA断片が増幅できる(図1、2)。 3. 増幅に用いたプライマー(PMF001を除く)は、DNA断片の塩基配列を決定する直接シーケンスのプライマーに用いることができる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 増幅されたDNA断片の塩基配列ならびに推定されるアミノ酸配列をデータベースの配列と比較することによって、供試したウイルスと既知ウイルスとの異同や類縁性が明らかになる。 2. 直接シーケンスを行う場合は、アガロースゲル電気泳動等で分離後精製したDNA断片を用いるとよい。また、制限酵素で切断したウイルスゲノムDNAをベクターDNAと連結した後、増幅DNAの塩基配列をもとに設計したプライマーとベクタープライマーを併用することによって、目的遺伝子の全塩基配列を効率的に決定できる(方法の詳細は、発表論文1を参照)。 3. 供試するウイルスDNA量が少ない等の理由によって目的遺伝子が十分に増幅されない場合は、PCR反応液をテンプレートに用いて2回目の増幅反応を行うと改善される場合が多い。なお、これまでにEGTを持たないバキュロウイルスとして、GVで1例の報告がある。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
カテゴリ | 病害虫 害虫 データベース 防除 |