低分子量キチン資材によるキャベツ萎黄病の発病抑制

タイトル 低分子量キチン資材によるキャベツ萎黄病の発病抑制
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 東北農業研究センター
研究期間 2001~2003
研究担当者 岡田浩明
吉田隆延
豊田真司(焼津水産化学工業)
又平芳春(焼津水産化学工業)
門田育生
発行年度 2003
要約 分子量3,000~50,000のキチンを主成分とする資材をキャベツ苗の土壌に灌注し、その後キャベツ萎黄病菌を接種すると発病が抑制される。また、同資材を複数回に分けて圃場栽培のキャベツに施用したところ、萎黄病の発病が施用初年目から抑制された。
キーワード キャベツ、キチン資材、低分子量キチン、萎黄病、発病抑制
背景・ねらい
カニ殻粉末を3年以上圃場に連用すると、キャベツ萎黄病の発病が抑制されることは既に明らかにされており(平成14年度研究成果情報)、病害防除資材としての利用が検討されている。この発病抑制機構については現在のところ不明であるが、キチンには植物の抵抗性を誘導するエリシター活性があることが知られている。このことから、カニ殻に含まれるキチンが微生物等によって分解され、その断片が根から吸収されて植物の抵抗性が活性化されていることが想定できる。そこで、キチンを塩酸で加水分解することにより低分子化した資材を作製して、キャベツ萎黄病に対する発病抑制効果を確認し、キチン資材の有効な利用法を明らかにする。
成果の内容・特徴 1.
カニ殻由来のキチンを濃塩酸を用いて所定条件のもとで加水分解し、アルカリで中和後ろ過して残渣を回収することにより、分子量3,000~50,000(10,000が中心)のキチンを含有した資材(低分子量キチン)が得られる(表1)。
2.
低分子量キチンの蒸留水懸濁液(10mg/ml)をポット栽培のキャベツ苗(萎黄病感受性品種:四季獲)に1個体当たり5ml土壌灌注し、その24時間後にキャベツ萎黄病菌を接種すると、無処理のキャベツに比べて発病が顕著に抑制される(図1)。
3.
セルトレイで育苗したキャベツ苗に、低分子量キチン懸濁液(1mg/ml)を1個体当たり5mlずつ土壌灌注し、萎黄病菌で汚染させた圃場に移植した。さらに、移植7日後から7日間隔で計5回に分けて、株元の土壌に1個体当たり約10mgとなるように懸濁液を灌注したところ、無処理区に比べて発病が抑制された(図2)。
4.
カニ殻由来のキチン(分子量500,000~1,000,000以上)およびキチンオリゴ糖(分子量400~3,000)を供試して同様の処理条件で比較したところ、低分子量キチンによって見られた発病抑制は認められなかった(図1,図2)。
成果の活用面・留意点 1.
低分子量キチンは特許出願中であり、各種病害に対する効果的な施用方法を検討することにより、病害防除資材としての利用の可能性がある。
2.
農薬登録を行っていないので、平成16年2月時点において病害防除薬剤として一般には使用できない。
図表1 211344-1.gif
図表2 211344-2.gif
図表3 211344-3.gif
カテゴリ 病害虫 萎黄病 育苗 キャベツ 抵抗性 農薬 品種 防除 薬剤

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