タイトル |
イノシシから農地を守る「金網忍び返し柵」 |
担当機関 |
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 |
2001~2005 |
研究担当者 |
江口祐輔
竹内正彦
上田弘則
仲谷 淳
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発行年度 |
2004 |
要約 |
高さ1mの金網柵に「忍び返し」状の折返しをつけることで、イノシシによる跳躍侵入を防ぐことができる。安価で容易に入手できる建築資材の溶接金網を折り曲げて、防護柵が作れる。
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キーワード |
鳥獣害、イノシシ、野生動物、被害対策、防護柵
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背景・ねらい |
イノシシによる農地侵入を防ぐためには、本種の感覚・運動能力など行動様式に則した被害対策を選定する必要がある。有効な防護柵を開発するために、柵に対する跳躍、侵入行動の解析を行っている。また、野生動物の学習能力は高く、慣れによって効果が無くなることも多いため、実証試験を通じてその有効性、持続性を検証している。
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成果の内容・特徴 |
- イノシシ防護柵として、高さ1m、10cm格子の溶接金網を用い、その上部30cmを外側に20~30度折返す「金網忍び返し柵」を考案した(図1)。材料には市販の建築資材が使え、折返し部分は角材を当て木にして手で引き上げれば容易に細工できる。
- 餌付けによって実験施設に誘導した野生のイノシシは、助走なしに高さ120cmの柵を飛び越える(図2)。
- 忍び返し柵の中に餌を撒き、イノシシの侵入行動をビデオで200回記録、観察した(表1)。忍び返し柵の前でイノシシは、踏切位置を忍び返しのない柵より後方に探す。このため跳躍幅が増え、飛び越えようとする行動自体を止めてしまう。こうしたことから、実質高94cmの柵でも侵入を回避できる。
- 設置には1m間隔で支柱を打ち、針金、結束帯などで固定する。掘り起こされないように5cmは土に刺し、接地面に材木を置くなどして補強する。また、柵の外側をトタンで覆うと、鼻で柵を押し上げる行動を防げ、かつ作物を隠す効果もある。
- 2004年夏期、前年にイノシシ害のあった島根県内4カ所の水田(平均面積33a)に忍び返し柵を設置した。いずれの実証圃でもイノシシの侵入はなかった(図3、4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 市販の溶接金網(別名:ワイヤーメッシュ)には15cm格子のものもあり、これでは幼獣がすり抜ける。こうなると成獣も執拗に侵入を試みるので10cm格子を使う。15cm格子しか手に入らない場合はトタンで外側を覆えば幼獣のすり抜けを防げる。また、10cmより格子の細かい、柵専用資材も市販されている。
- 建築資材を流用し、自前で曲げるため低コストである。金網(1m×2m)は1枚700~1500円程度で、設置コストは100mで約5万円である。共同設置で大きく囲えば個々の圃場を囲うより設置距離を減らせる。仮に、折返しのない1.2m高のメッシュ柵を用いるとすれば特注となり、資材費が格段に高くなる。
- 有効な防護柵も放置は禁物である。農作業、見回りなど人の存在は、イノシシを警戒させ、農地から遠ざける効果を持つ。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
コスト
水田
鳥獣害
低コスト
防護柵
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