タイトル | 園芸産地における生産者のコミュニケーション・ネットワーク構造の特徴 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 | 2002~2004 |
研究担当者 |
角田 毅 佐藤百合香 |
発行年度 | 2004 |
要約 | 園芸産地で早期に新作目を導入した集落の生産者のネットワーク構造をみると、地元に即した技術情報の収集役となる手段的リーダーが存在すると共に、早期導入者が表出的リーダーと内部の情報を共有し易い関係を形成する特徴がある。 |
背景・ねらい | これまで小集団論では、集団の維持・存続を図るリーダーの役割として、成員間の情緒的関係を安定させ連帯を促す「表出的役割」と、外部から情報や資源を導入する「手段的役割」の二つがあり、それらを役割分担する複数のリーダーの存在が指摘されている。しかしロジャーズ等を代表とする一般普及学のリーダー研究では、技術をいち早く導入するリーダー(早期導入者)とフォロワーの関係に焦点が当てられており、早期導入者も含め上記の役割分担に伴うリーダーが互いにどのような関係を形成しているかは明らかにされていない。そこで、生産者間に形成されるコミュニケーション・ネットワーク構造(以下、ネットワーク構造)、並びにリーダーの存在に着目し、園芸作目の導入により産地形成に成功した事例における生産者間のネットワーク構造の特徴を抽出した。 |
成果の内容・特徴 | 1. リーダーの抽出に際し、対象集落における生産者のソシオグラムを作成し、各成員の中心度を算出した(図1)。ソシオグラムは、各農家で当該作目の主な担当者1名に、技術情報の授受がある相手や普段行き来のある親しい相手の氏名を回答してもらい、回答があった関係を線で結んで作成した。一般に中心度が相対的に高いほど、当該成員はネットワークにおいて多くの情報を授受し、影響力をもち易いリーダー的存在とされる。 2. 各ネットワークで、特に中心度の高い2名に着目すると、2名のうち一方(a集落:図2の№2、b集落:図3の№3)は、①担い手農家として、稲作の作業受託グループのリーダーや、ハウス内の深耕作業受託のオペレータを務めたり、部会長として技術系統の異なる生産者間の調整的役割を果たす等、集落の営農体制を支援する立場、もう一方(a集落:№4、b集落:№7)は、②作型が多い、部会の展示圃の管理を長年任される、導入以前から他集落の早期導入者と交流がある等、地元に即した情報を授受し易い立場にある(表)。したがって、①は表出的役割を担う表出的リーダー、②は手段的役割を担う手段的リーダーに合致する。 3. 集落内で最も早期に導入した人(a集落:№8、b集落:№7)は、中心度がネットワーク内の平均値(a集落:12.6、b集落:13.6)以上であり、一定以上のコミュニケーション・ルートを確保しつつ表出的リーダーとリンクしている。つまり早期導入者は、集落内で一匹狼的存在ではなく、表出的リーダーとの間に情報の共有関係を形成している。 4. 以上、地元に密着した情報を授受しやすい手段的リーダーの存在や、早期導入者と表出的リーダーが内部の情報の共有を図り易い構造となっていることが、早期導入集落における生産者のネットワークの特徴である。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 岩手県A町a集落(16戸)と秋田県B町b集落(12戸)を事例とした。 2. 生産者間のネットワーク形成を促す際の基礎的知見として活用できる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
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