タイトル |
スーダングラスの硝酸態窒素濃度を低減するための土壌診断に基づく施肥管理 |
担当機関 |
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2002~2005 |
研究担当者 |
須永義人
畠中哲哉
川地太兵
江波戸宗大
原田久富美
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発行年度 |
2005 |
要約 |
作土の生土培養窒素量が40mgN/kg乾土以上では、窒素肥料施用によるスーダングラスの増収効果はなく、硝酸態窒素濃度は2g/kg乾物を越えるため、窒素肥料の基肥、再生草への追肥は行わず、堆肥等有機物の施用を削減もしくは中止する。
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キーワード |
スーダングラス、硝酸態窒素、土壌診断、施肥、生土培養、土壌肥料
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背景・ねらい |
飼料作物は家畜ふん尿由来の有機物主体の施肥条件で栽培される。有機物主体の施肥管理においては地力窒素の評価が重要であるが、飼料作物の生育や硝酸態窒素濃度を適正なレベルとするための基準はこれまでにない。スーダングラスはロールベール向けの主要な夏作飼料作物であるが、特に硝酸態窒素を蓄積しやすい草種であり、硝酸態窒素の過剰蓄積を防ぐには施肥の調節が必要である。そこで、硝酸態窒素濃度の適正なスーダングラスを栽培するための土壌窒素肥沃度の診断に基づく施肥管理を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 窒素肥沃度の異なる試験圃場を用いて、スーダングラスを窒素肥料無施用で数年間栽培した。多回刈り栽培では、1番草及びその2番草を出穂前(止葉展開~穂ばらみ期)に、1回刈り栽培では出穂期に収穫を行った。土壌は播種前に作土10cmから採取、生土状態で2mmの篩いを通し、可給態窒素量の定量法に準じて、30℃4週間培養した。培養後の無機態窒素量から培養前を差し引いた値を生土培養窒素量とした。
- スーダングラスの収量は生土培養窒素量が増すとともに増大し、40mgN/kg乾土を越えるとほぼ横ばいになる(図1)。硝酸態窒素濃度は1、2番草いずれも生土培養窒素量の増加に伴い直線的に高まり、収量が頭打ちとなる40mgN/kg乾土を越えると飼料作物の硝酸態窒素濃度の基準値2g/kg乾物を越える(図2)。
- 生土培養窒素量40mgN/kg乾土未満の圃場において、スーダングラス栽培期間中(1回刈り出穂期収穫)に作土から無機化する窒素量は5kgN/10a程度と推定される(図3)。
- 窒素施肥基準15kgN/10aより作土から無機化する窒素の推定量を差し引いた10kgN/10aを基肥として施用した結果、1番草の乾物収量は各年の最大収量区とほぼ同程度、硝酸態窒素濃度は基準値以下である(表1)。
- 生土培養窒素量の測定には4週間必要だが、前作(冬作)栽培前の土壌の測定値とほぼ等しいことから(決定係数0.882、図表省略)、事前に診断できる。
- 以上、生土培養窒素量が40mgN/kg乾土を越える場合、窒素施肥による増収効果はなく、さらなる硝酸態窒素の蓄積を招くので、窒素肥料の基肥、1番草収穫後の追肥は行わず、また、堆肥等有機物の施用を削減もしくは中止する。40mgN/kg乾土未満の場合、10kgN/10aの基肥を施すことで、硝酸態窒素濃度の適正なスーダングラス1番草を栽培できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 生土培養窒素量は硝酸態窒素濃度の適正なスーダングラスを安定栽培するための施肥管理の基準として活用できる。
- 試験は栃木県北部(土壌:褐色低地土)で実施した。栽培地域、条件による違い及び多回刈り栽培における再生草への施肥はさらに検討が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
肥料
飼料作物
施肥
土壌管理技術
土壌診断
播種
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