タイトル | 種子付きマットを用いた水稲の箱なし育苗法 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 | 2005~2005 |
研究担当者 |
安本知子 岡田謙介 松崎守夫 中西一泰(JA全農) 白土宏之 北川寿 鈴木光則((株)山本製作所) |
発行年度 | 2005 |
要約 | 水稲の「箱なし苗」は覆土量300-400gの種子付きマットを用いて、孔のないシートの上で無加温平置き出芽法で出芽させる。苗丈4-6cmの時に保温被覆を除去し、24-28日間育苗することにより慣行の土付苗に近い苗ができ、出穂期、収量も慣行の稚苗と同等となる。 |
キーワード | イネ、種子付きマット、箱なし苗、育苗 |
背景・ねらい | 水稲の「箱なし苗」移植栽培技術は、種子と覆土を苗箱サイズのもみがら成型マットに接着した「種子付きマット」を利用して、苗箱と農家における播種作業を不要にし、苗マットの重量を慣行の半分にできる、省力化と軽作業化をもたらす栽培技術である。しかし催芽種子ではなく浸漬乾燥種子を用いるため、土を用いた慣行の稚苗に比べると出芽が遅くなる。また、慣行の稚苗に比べて苗丈が伸びにくい傾向がある。そこで、「箱なし苗」に適した育苗法を開発することをねらいとする。 |
成果の内容・特徴 | 1. 「箱なし苗」は種子付きマット(播種量150g)を苗床に敷いたシートの上に並べ、灌水後保温のため被覆して無加温平置き出芽法で出芽させる。苗床に敷くシートは孔ありでは被覆期間中にマットの一部が乾燥する場合があり、苗の生育も劣るので孔なしがよい(表1)。 2. 種子付きマットに接着する覆土量は多いほど苗の生育がよい傾向があるものの、灌水量3Lでの出芽不良の程度も大きくなるため300-400gがよい(表1)。覆土量500gでも灌水量1.5Lでは出芽不良が生じていないが、農家における育苗では灌水むらや苗床の凹凸による部分的な水分過剰により出芽不良が生じる恐れがある。 3. 「箱なし苗」の育苗開始時の灌水量は3Lより灌水後しばらくしてようやく底面が湿る程度の1.5Lの方が過湿による出芽不良のおそれが少ない(表1)。 4. 被覆期間によって出穂期や収量は変わらないものの、一般的な稚苗の苗丈である12cm程度を目安とすると、被覆除去は苗丈が4-6cm程度の時に行うのがよい(表2)。その根拠は苗丈4cmより早く被覆を除去すると苗丈が10cmより短くなり、短すぎるからである。一方、徒長や病害、カビの危険性を考慮すると被覆期間は短い方が望ましい。 5. 育苗期間によって欠株率や収量は変わらないものの、一般的な稚苗の苗丈である12cm程度を目安とすると、「箱なし苗」の育苗期間は24-28日がよい(表3)。20日では苗丈が10cm以下となり短すぎる。28日以上育苗しても出穂期は1日しか短くならない。また、育苗管理の労力の点では育苗期間は出来るだけ短いほうがいいので、育苗期間は24-28日が適当である。 6. 適切な育苗条件は表4のとおりである。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 育苗開始時の灌水量1.5Lは水1Lと水に溶かした殺菌剤0.5Lの合計。 2. 表2の箱なし苗は移植2日前に窒素、リン酸、カリを各0.5g、表3の箱なし苗は移植前8日に各1g追肥した。 3. 温暖地においてコシヒカリを用いた結果であるので、他の地域や品種では再度検討が必要である。4.被覆除去後の水管理と温度管理は慣行通りでよい。葉色が薄い場合や、苗丈を伸ばしたい場合は窒素成分で1g/箱程度を追肥するとよい。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 育苗 温度管理 乾燥 栽培技術 シカ 出芽不良 省力化 水稲 播種 品種 水管理 |