ディーゼル特殊自動車にバイオディーゼル燃料100%を利用する場合の留意事項

タイトル ディーゼル特殊自動車にバイオディーゼル燃料100%を利用する場合の留意事項
担当機関 原動機第1試験室
研究期間 2006~2008
研究担当者 清水一史
千葉大基
杉浦泰郎
高橋弘行
積栄
原野道生
発行年度 2008
要約  バイオディーゼル燃料は、軽油と比べて、単位質量あたりのエネルギ量が少ないため、一定の仕事をするために必要な燃料の質量は多くなる。また、残留メタノールが多いと、メタノールの気化により出力低下が起こり、ロータリ耕うんなど高負荷作業では、通常の作業を行えない可能性がある。
キーワード バイオディーゼル燃料、ディーゼル特殊自動車、燃料消費率、排出ガス、メタノール
背景・ねらい アルカリ触媒法により製造されたバイオディーゼル燃料(脂肪酸メチルエステルFatty Acid Methyl Ester:以下「FAME」)は、代替燃料としてディーゼル機関を搭載した農業機械、建設機械などディーゼル特殊自動車への利活用が期待される。2009年2月25日施行の「揮発油等の品質の確保等に関する法律(以下「品確法」)」では、品質規格に適合したFAME5質量%混合までの軽油(以下「品確法軽油」)を、公道走行する自動車用の燃料として販売又は自ら消費できるとしている。国内農機メーカー等においても、品確法軽油の使用を保証しているが、自己責任での使用となるFAME100%では、出力や燃費、排出ガス等の性能を公表しておらず、点検・整備方法等も確立されていない。そこで、FAME100%をディーゼル特殊自動車へ利用した場合の影響を調査し、利用上の指針を示す。
成果の内容・特徴
  1. FAMEは、JIS2号軽油(以下「軽油」)と比べて、低位発熱量(単位質量あたりのエネルギ量)が少ない、密度や流動点が高い、酸素分を含むなどの特徴がある。また、水分、メタノール分、トリグリセリド等のグリセリド類が残留するなど、性状は様々である。なお、収集したFAMEは、品確法に定められた品質規格に適合しないため、公道走行する自動車用の燃料として軽油に混合しての使用はできないが、100%のものを自己責任で使用することができる(表1)。
  2. ディーゼル機関では、機関回転速度および負荷率毎に燃料体積流量がほぼ一定となるため、軽油と比べて密度が高く、低位発熱量が少ないFAMEを使用した場合、使用するディーゼル機関により異なるが、出力は、0~5%程度低下する。また、軽油と比べた低位発熱量の低下割合に反比例して燃料消費率(一定の仕事をするために必要な燃料の質量)は多くなる(図1)。
  3. ディーゼル特殊自動車の排出ガス規制に用いるディーゼル特殊自動車8モード法による排出ガス測定の結果、窒素酸化物(以下「NOx」)は、軽油と同程度であり、また、粒子状物質(以下「PM」)は、すすの生成が抑制されることにより、軽油に比べ減少する(図2)。
  4. FAMEの製造にメタノールが使用されるが、残留メタノール分の多いFAMEでは、引火点が下がり(表1)、燃料を取扱う上で危険性が増すだけでなく、ディーゼル特殊自動車に使用した場合、噴射ノズル付近で気化したメタノールにより、特に定格回転速度付近で、燃料流量の低下に伴う出力低下が著しくなる(図3)。このため、ロータリ耕うんなど高負荷作業では、速度が低下、変動し、通常の作業が行えない可能性がある。これらを改善するためには、製造工程の中で、残留メタノールを徹底的に除去することが重要となる。なお、図3右図は軽油にメタノールを添加し、確認した結果である(メタノール容積添加割合は(1)0%、(2)0.5%、(3)1.0%、(4)1.5%〔以下「M0」、「M0.5」、「M1.0」、「M1.5」〕)。
成果の活用面・留意点
  1. FAMEの利用指針を示したパンフレットを作成し、農林水産省のバイオディーゼル燃料普及に係る事業を通じ、行政機関、FAME製造所、農業機械メーカー等FAMEを普及、製造、利用する機関、団体に配布することで、燃料の適切な利活用が可能になる。

図表1 211704-1.gif
図表2 211704-2.gif
図表3 211704-3.gif
図表4 211704-4.gif
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