タイトル |
天北地域における放牧導入割合別経営モデルの策定と経営経済的評価 |
担当機関 |
北海道立天北農業試験場 |
研究期間 |
1997~1997 |
研究担当者 |
坂東 健
佐竹芳世
石田 亨(現道南農試専技室)
中村克己
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発行年度 |
1997 |
要約 |
放牧導入割合が高くなるにつれて牧草サイレ-ジと敷草の調製量および糞・尿の舎内産出量が著しく減少し、労働時間も減少する。また、放牧草は高栄養であるために安価な濃厚飼料を利用できることや粗飼料調製の費用も節減できるので所得金額は増加し、所得率は向上する。
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背景・ねらい |
天北地域は放牧に適した立地条件にあり、ペレニアルライグラス放牧草地の集約利用技術や季節分娩・集約 放牧組合せ乳牛飼養技術、高泌乳牛の放牧技術指標などについて明らかにされている。しかし、その ような技術を導入した場合の草地、施設、機械の適正な組合せや放牧の導入が労働時間や経営経済的 成果に及ぼす影響についての体系的な検討はほとんどなされておらず、これらについての究明が要望 されていた。
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成果の内容・特徴 |
- 天北地域における酪農家1戸当たりの放牧地および兼用地の面積は、それぞれ9.4ha、3.6haであり、
全草地面積の19%、7%を占めている。放牧導入割合の高い酪農家(大区)は、経産牛の放牧なし(0 区)の酪農家に比べて、夏期間の経産牛および育成牛の飼養管理労働時間が少なく、粗収益はやや少 ないが費用(飼料費等)も少ないために、所得金額および所得率は高くなる(表1)。しかし、同じ 放牧依存率でも酪農家間の経営成果の差異は大きい。
- 策定した経営モデルにおいて、放牧導入割合が高くなるにつれて牧草サイレ-ジおよび敷草の調
製・利用量、および処理を必要とする糞および尿の舎内産出量は著しく減少し、また放牧草は高栄養 であるために併給する配合飼料の粗蛋白質の含量を低下させ、ビ-トパルプの給与量を増加することが できる。各モデルの放牧依存率(年間)は、放牧導入割合0、小、中、大および大(季節繁殖)区で、 それぞれ10、18、25、33および37%となり、飼料自給率は68%から71%の範囲にある(表2)。
- 経営モデル5タイプにおいて、労働時間では放牧導入割合0区が最も多く、年間合計5,547時間とな
り、放牧導入割合が高くなるにつれて減少し、大(季節繁殖)区が最も少なく、0区に比べて638時 間減少した(表3)。また、各モデルの粗収益は同じであるが、放牧導入割合が高くなるにつれて費 用のうち、飼料費、機械の減価償却費と修理費、諸材料費(牧草サイレ-ジ調製用等)などが減少し たために所得金額および所得率は増加し、自家労働1時間当たりの所得金額も増加する(表3)。
- 以上、天北地域の酪農経営において放牧導入割合を高めることは、労働時間の短縮および経営経済
的な見地からみて、有効である。
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成果の活用面・留意点 |
- 経営条件は酪農家間で大きく異なるので、放牧導入の効果については、経営体個々について検討が
必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
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