タイトル |
フリーストール経営の投資水準と収益性 |
担当機関 |
北海道立根釧農業試験場 |
研究期間 |
1997~1998 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
経産牛115等に拡大したフリーストール経営の収益性を検討した結果、標準的投資では農業所得が1,604万円が期待できるが、資本回収が可能になるまでに6年を要し、繁殖成績低下や高淘汰率では回収できない。投資額が低ければ所得が高いが総合耐用年数により資本回収の成果が変動するので、施設等の利用年数延長のほか、より高い繁殖管理が必要となる。
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背景・ねらい |
フリーストール牛舎規模が牛床数100程度、経産牛頭数115頭程度、家族労働力3人を基本とした大規模フリーストール飼養技術を想定し、規模拡大した酪農経営の資本投資と回収状況を現状での技術体系を用いたモデルから検証する。
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成果の内容・特徴 |
- 家族労働力3人、初産分娩月齢26ヶ月、除籍率25%、借入金比率50%の場合、目標経産牛頭数に達するのはフリーストール牛舎導入後7年目で、農業所得は低水準投資タイプ2,030万円、中間投資タイプ1,935万円、標準投資タイプ1,594万円である(図)。このときの労働時間は男性1が2,795時間、男性2は1,006時間、女性が1,678時間である(表1)。初産分娩月齢が28ヶ月になると標準投資タイプは農業所得が1,230万円へと低下した。さらに、初産分娩月齢26ヶ月の場合で除籍率が30%になると目標経産牛頭数到達に11年を要し、農業所得は1,310万円になる。標準投資タイプでは繁殖成績が悪い場合の収益性に問題が残った。
- 家族労働力を3人から2人にした場合の労働時間は男性2,893時間、女性2,212時間で年間457時間の不足が生じる。その対応として雇用労働力利用、一部コントラクタの利用、全面的なコントラクタ利用時の農業所得の比較を行った。労働力不足の時期だけ臨時雇用を行う時の所得(標準投資タイプで1,545万円)が最も高いが、長期間にわたり労働力が不足し人員確保や作業能率に不安が残るため、今回の検討の中では長期間の雇用者を確保するほうが農業所得(標準投資タイプで1,483万円)としては酪農家の行動として妥当性がある。
- 資本回収法により設備投資の妥当性を検討したが、どのタイプもフリーストール牛舎導入直後は資本回収必要額に対して資本回収見込額が下回る。上回るようになるのは標準投資タイプが6年目、中間投資タイプと低水準投資タイプが4年目である(表2)。標準投資タイプでは繁殖成績低い場合や借入金比率が高い場合では資本回収が進まなくなり設備投資の妥当性が失われるため、フリーストール飼養体系の酪農家平均程度の繁殖成績を維持するなどの対応が必要である。また、低水準投資タイプでは農業所得が高いが、機械・施設の耐用年数を短く設定しているので繁殖成績が悪い場合には、資本回収がそれほど進まない結果となり、フリーストール牛舎等への投資額を低く抑えた場合でも耐用年数を引き延ばすことが必要になる。
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成果の活用面・留意点 |
フリーストール牛舎を導入する際の情報となるが、経産牛頭数115頭程度の試算であり、草地型フリーストール飼養体系であることに留意する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
規模拡大
経営管理
乳牛
繁殖性改善
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