タイトル |
酪農地帯における新規参入者の経済的成功要因 |
担当機関 |
北海道立根釧農業試験場 |
研究期間 |
1999~1999 |
研究担当者 |
金子 剛
|
発行年度 |
1999 |
要約 |
新規参入酪農経営の成功要因は、参入時の明瞭な営農方針、営農方針に即した技術力、営農方針や技術力に対応した農場の確保である。受け入れを進める地域主体は、新規参入希望者を評価し、参入予定農場の適合性を事前に検討する必要がある。
|
背景・ねらい |
近年、北海道では新規参入する酪農経営が増加しているが、必ずしも安定的営農を実現していない。新規参入経営の経営状況から、経済的に安定する要因を明らかにする。
|
成果の内容・特徴 |
- 新規参入経営の営農方針・営農方式は多様であり、新規参入時には様々な問題を抱えて営農を開始している(表1)。
- 新規参入経営は、中小規模で泌乳水準が低~中である経営と、大規模で高泌乳の経営に分けられる。参入後8年以上経過した新規参入経営の所得水準の比較では、どの規模でも高い所得を実現する経営と低い所得の経営が存在しており、経営規模によらず成功の可能性がある一方で、同じ展開であっても失敗する場合があることを示している(表2)。
- 小規模で高所得の経営(A・H)は、長期実習等による技術習得の上で低投入方式を志向した。低所得の経営(G)は、牛舎が狭小かつ拡張困難で十分な所得が得られなかった。そこで低投入方式への転換を図ったが、草地の低生産性や技術的問題から、十分な経営成果は得られていない(表3)。大規模で高所得の経営(K)は、多頭化による所得追求を明確な指針とし、フリーストール施設の導入を重視した。平均的な所得の経営(M)は、必ずしも明瞭ではなく、追加投資として飼料作機械の更新を重視し、その後の生産拡大が遅れた。
- これら新規参入経営の調査事例から、成功の要因として、1)就農段階で明瞭な営農方針を持ち意思決定を行うこと、2)営農方針に即した高い技術能力を保有すること、3)営農方針や技術能力を発揮することが可能な農場確保と整備が重要となる。
- このことから、受け入れを進める地域主体が新規参入経営の経済的成功を誘導するためには、参入希望者の誰でも受け入れるような安易な参入を抑制し、事前評価として営農方針の確認、技術能力の評価、携行資金額の確認を行うことが必要である。農場選定では、営農方針に対する規模や施設の状態、草地の生産性など営農方針への適合性、必要な追加投資額の事前検討が必要である。
|
成果の活用面・留意点 |
この結果は、地域主体による新規参入経営受け入れ対策の検討において活用する。 平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分 課題名:酪農地帯における新規就農者の成功要因の解明(指導参考)
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
カテゴリ |
経営管理
生産拡大
乳牛
|