タイトル |
土壌養分を有効化するキノコの役割 |
担当機関 |
森林総合研究所 |
研究期間 |
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研究担当者 |
高橋正通
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発行年度 |
1992 |
背景・ねらい |
森林土壌の養分状態にはキノコが重要な役割を果たしている。ひとつには落葉などの有機物を腐らせ、その中の養分を植物に利用可能な無機養分にする腐朽菌と、もうひとつは、樹木と共生し、養分吸収を助ける外菌根菌の働きである。一方、天然林の更新には稚樹の消長が重要な問題である。稚樹の成長に係わる土壌養分を評価するためには、これまでの外分や土壌型単位の評価に代わって、地表面のミクロなサイトの評価が必要である。そのため地表の落葉や土壌のミクロな部位の養分有効化に係わるキノコの役割を研究した。
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成果の内容・特徴 |
図1に落葉広葉樹林のキノコのコロニーの分布様式を模式的に示した。落葉分解力の強い白色腐朽菌のワサビカレパタケは、比較的新鮮な落葉を分解しながら移動する。外生菌根菌のうちヌメリササタケは菌糸の密生した菌根のマットを土壌中に作る。しかし、ハエトリシメジ、チチタケ、アカカバイロタケ、オオツルタケなどの菌根はマットを作らず小さな菌根が分散している。これらのキノコの菌糸や菌根の周辺と、それらを含まない部分の落葉や土壌中の水溶性の養分、pHや、落葉の分解産物である低分子の有機炭素を分析し、比較した。白色腐朽菌の中心部では、Ca、Mg、NH4、K等の陽イオンおよび有機炭素が集積し、非常に高濃度であった(図2)。有機炭素には有機酸が含まれ、pHは強酸性であった。土壌表層は植物や微生物が競合しながら養分を吸収するため、一般に水溶性養分は少ない。しかし、白色腐朽菌中心部に養分が集積することは、分解能力が高いことと共に、他の生物に対し養分を利用できないような忌避的な作用(アレロパシー)をもつことが示唆された。また落葉の中の水溶性養分のうち、白色腐朽菌に由来する割合を試算したところ、60~81%となり(図3)、養分の有効化に大きな役割を果たしていた。外生菌根も菌根周辺部には水溶性養分が多い(図4)。菌糸密度の高いマットでは特にその傾向が顕著であり、pHも酸性である。外生菌根も土壌養分を有効化する能力をもつことが推察できた。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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