タイトル | スギカミキリの大量継代飼育法の確立 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
森林生物部昆虫管理研究室 北島 博元関西支所昆虫研究室 五十嵐正俊 |
発行年度 | 1992 |
背景・ねらい | スギカミキリは,幼虫がスギ・ヒノキ等の生立木の内樹皮及び辺材部を食害し,その材質を劣化させるばかりでなく,しばしば枯損をも引き起こすため,林業経営上大きな問題となっている。本種に関する生理・生態的な研究の遂行及び本種による被害の防除法を開発するために,これまでにも本種幼虫の人工飼育が試みられてきた。本研究では,新たな生物的防除法の開発に資するため,均質な供試虫を,大量かつ周年的に確保するための飼育法の開発を行った。 |
成果の内容・特徴 | 本種幼虫の餌として,木口面をパラフィンで覆った高さ15cmのスギ輪切り生丸太,及び表1の人工飼料を用いた。スギ輪切り生丸太による飼育では孵化幼虫を接種して25℃長日条件下(16L8D)に保存すると,120日後には羽化を完了した。人工飼料による飼育では,飼料に孵化幼虫を接種した後,途中2回の飼料交換を行いながら25℃長日条件下で飼育すると,130日後には,接種幼虫数に対して約50%の成虫が得られた。本種は羽化後直ちに生殖休眠に入る。自然状態では休眠は冬期の低温にさらされることによって打破され,成虫は産卵可能な状態となる。周年的な継代飼育を行うためには人為的に生殖休眠を打破させる必要があり,それには羽化した成虫を,7℃に90日間以上保存後,25℃に加温する方法が適当であることが分かった。スギ輪切り生丸太による飼育では,加温後約3週間までに接種幼虫数に対して約66%の成虫が脱出し,これら成虫の平均産卵数は100卵を越え,その約40%が孵化した。人工飼料による飼育では,成虫の平均産卵数は150卵を越え,その約50%が孵化した。また,卵を10~26℃に保存することにより,孵化率を下げることなく卵期間を55~57日間まで調節出来る ことが分かった。 以上より,スギ輪切り丸太及び人工飼料のどちらを用いても,羽化まで120~130日間,生殖休眠打破のための低温処理に90日間以上,その他交尾・産卵期間や卵期間などを含めておよそ8~9か月で次世代成虫が得られることとなり,周年的な継代人工飼育が可能となった。 |
図表1 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 経営管理 生物的防除 防除 |