林内光環境測定方法としてのアントラセン法の検討

タイトル 林内光環境測定方法としてのアントラセン法の検討
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 宇都木玄
石塚森吉
北海道支所造林研究室大澤奈保子生産技術部物質生産研究室 千葉幸弘
発行年度 1992
背景・ねらい 森林内の光環境は森林の生産力,林木の成長に深く関わっているが,その測定には様々な方法が用いられてきた。アントラセンの光化学反応を利用し,林内の光環境を裸地に対する相対値として評価するアントラセン法もその一つである。アントラセン法の特徴は多点で,また積算値として光環境を評価できることである。そのため直達光成分が平均化され,天候に左右されない安定した相対値が得られると言われてきた。このことは,測定の日程が限られている場合に重要な利点であるが,今までに天候によって測定値に変動がないことを確認した例はなかった。本研究ではこの点を明らかにするためにアントラセン法の基礎実験を行った。
成果の内容・特徴 ヒノキ林を対象に天候の異なる日に測定を行った。ヒノキ林の樹冠層内及び樹冠の上方にそれぞれ8個のアントラセンアルコール溶液入りのバイエル瓶を設置した(図1)。約24時間放置後回収し,溶液の吸光度を測定した。同時に樹冠上方のバイエル瓶設置場所に光量子センサーとデータロガーを設置し,アントラセン露光中の積算光量子密度を測定した。測定は10,11月に合計11回行った。
樹冠内に設置したアントラセン溶液の吸光度の対数値は樹冠の上方で測定した林外の光量子量に対してほぼ直線的に減少した(図2)。アントラセン溶液の吸光度の対数値が露光した光量子量に対し直線的に減少することはすでに過去の研究で確かめられている。従って,樹冠内で露光したアントラセン溶液について図のような直線的な減少が得られたことは,林外で露光した光量子量の多少(天候)に関わらず一定の相対値(以下,相対光量子量とする)が得られたことを意味する。実際に樹冠上のアントラセンを用いて計算した相対光量子量は,天候によらず,ほぼ一定の値となった(図3)。
アントラセンの反応は紫外線域の放射によって起こるが,天候に関わらずほぼ一定の相対光量子量の値が得られることが確認された。従って,アントラセン法は林内の光環境を示す指標を,天候に無関係に得る有効な手段であると考えられる。
図1 実験の概況
図2 樹冠内に設置したアントラセン溶液の露光後の吸光度と樹冠上方で測定した積算光量子密度の関係
図3 樹冠内の相対光量子量と、その時の積算光量子密度の関係(樹冠上方のバイエル瓶のアントラセン濃度が限界をこえたものは除く)
図表1 212320-1.gif
図表2 212320-2.gif
図表3 212320-3.gif
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