誘引剤によるニホンキバチ防除法の開発

タイトル 誘引剤によるニホンキバチ防除法の開発
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 井上大成
四国支所保護研究室 山崎三郎
発行年度 1992
背景・ねらい ニホンキバチ Urocerus japonicus は,スギ・ヒノキの材質劣化害虫の1種である。雌成虫は産卵の際,産卵管を通して材内にAmylostereum chailletii菌を持込むことによって,村内に長さ60~80cmほどの変色帯が生じる。この変色は木口では星型の模様となって現れ(写真1),材質と材価を著しく低下させる。本種は日本全国に分布するが,西日本特に四国地方に広く分布し,その被害は切捨て間伐林などを中心に局所的に多く見られる。このため,今後成虫密度の上昇が起った場合,主伐期の良質材生産に重大な影響を及ぼしかねない害虫として注目されている。
成果の内容・特徴 当研究室での調査によって,高知県下では成虫は6月上旬から10月中旬まで発生し,林内を活発に飛びまわり,雌は被圧木や伐倒木だけでなく健全木にも産卵することが明らかとなっている。そこで成虫の密度を低下させ交尾・産卵活動を阻止することが最も有効な防除法であると考え,誘引剤(ホドロン油剤=商品名,井筒屋化学産業,主成分=安息香酸・オイゲノール)を用いた成虫の誘殺試験を行った(写真2)。その結果,成虫は6月下旬から10月上旬まで誘殺され.最盛期は7月下旬で,全期間を通じて雄の誘段数が極めて多かったが,雌の誘殺割合は後半に多くなる傾向がみられた(図1)。間伐後2年目のヒノキ林内に設置した9基のトラップ(1基30m×30m)では,誘段数の合計は1,319頭で,トラップ1基当たりでは147頭が誘殺され,最高は303頭,最低は56頭であった。性比(雌/雄+雌)は0.25で雄の割合が極めて高かったが,切り捨て間伐後の林ではどこでもほぼ同様の傾向を示した(表1)。林内のトラップの設置場所によって誘段数にはバラツキがみられた他,成虫の有効誘殺範囲を調べた結果,成虫が最も多く誘殺される高さは地上から2m附近であることも明らかとなった。
以上の結果から,誘引剤による誘殺法は,ニホンキバチ成虫の防除法として極めて有効であることが証明されたといえる。ニホンキバチの成虫は寿命が1週間以内と短いことから,トラップに誘殺された個体は,羽化脱出後間もない成虫であると考えられる。従って,今後この方法は,成虫の発生消長調査や,発生予察のためのモニタリングにも利用することが可能である。また森林生態系に及ぼす影響も小さいと考えられ,利用価値が高い方法といえる。

図表1 212334-1.jpg
図表2 212334-2.jpg
図表3 212334-3.gif
図表4 212334-4.gif
カテゴリ 病害虫 害虫 防除 モニタリング

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