常緑広葉樹林を構成する主要樹種の更新特性

タイトル 常緑広葉樹林を構成する主要樹種の更新特性
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 元九州支所暖帯林研究室 田内裕之(現熱帯農業研究センター)九州支所暖帯林研究室  小南陽亮
佐藤 保
竹下慶子
発行年度 1992
背景・ねらい 常緑広葉樹林は九州地域における代表的な天然林であり,高度な公益的機能をもつ森林資源としての評価が近年高まっている。しかし,豊富な種によって構成される常緑広葉樹林が形成・維持されるメカニズムについては,未知の点が多い。この研究では,常緑広葉樹林の保全・管理技術を確立するための基礎として,成熟した常緑広葉樹林を構成する主要な樹種の更新特性を明らかにすることを目的とした。
成果の内容・特徴 宮崎県綾町と鹿児島県大口市にある成熟した常緑広葉樹林にそれぞれ4haと0.48haの間定調査地を設定し,直径5cm以上の全樹木を対象に毎木調査を行った。また,種子生産,実生の発生と生残,ギャップ形成についても継続的に調査した。それらの結果から,常緑広葉樹林を構成する主要樹種であるカシ類,タブノキ,イスノキの更新特性を以下のようにまとめることができた(図)。
カシ類は,比較的安定した種子生産と稚樹の生存率がやや高いことにより,林内に多くの稚樹集団をつくることができる。しかし,カシ類の胸高直径分布はゆるやかな一山型であり,成熟した常緑広葉樹林において現在みられる規模の撹乱では,稚樹集団から多くの個体が後継樹にまで成長することはできないことを示した。
タブノキは,実生が定着する確率が低いにもかかわらず,大量に種子を生産することによって稚樹集団をつくることができる。タブノキの胸高直径分布はカシ類よりはゆるやかな一山型であったが,現在の成木密度を将来維持できるほど後継樹の数は多くなかった。高木層において最も優占的なタブノキも,その更新においては大規模な撹乱にある程度依存的なようである。
イスノキの種子生産は極めて貧弱であるが,稚樹の生存率は極めて高く,稀な豊作に由来すると推定される稚樹が多く生育していた。また,イスノキの胸高直径分布は明瞭なL字型であり,多くの後継樹がみられた。イスノキは,カシ類やタブノキと異なり,更新において撹乱に非依存的であるとみなせる。

図表1 212335-1.gif
カテゴリ 管理技術

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