タイトル | スギ・ヒノキ等の着花抑制技術の開発 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究担当者 |
生物機能開発部生理機能研究室 長尾精文 |
発行年度 | 1992 |
背景・ねらい | 近年,スギ,ヒノキ花粉症,いわゆるスギ花粉症患者が激増し,大きな社会問題になっている。スギ花粉症患者が激増した原因の一つには,戦後人工造林されたスギやヒノキ林の多くが着化年齢に達し,雄花を着生するようになり,花粉の生産量が増したこともあげられる。花粉の飛散量を少なくする方法として,雄花の着生量の多い木の間伐や枝打ちが行われているが,その効果も限られている。そのため,最近では薬剤による着花抑制技術が種々検討されているが実用化には至っていない。従って,薬剤処理によるスギ,ヒノキ類の雄花の着花抑制法の開発を目的とした。 |
成果の内容・特徴 | これらのことを背景に,スギ,ヒノキ類の花粉症対策として,薬剤散布等によるスギ,ヒノキ類の花芽形成の抑制,特に雄花の着花抑制の実用化技術の開発を進めるために,種々の植物成長調節剤を用いて予備的に着花抑制効果を検討した結果,ジベレリン生合成阻害作用をもつウニコナゾール,ウニコナゾールP及び天然型アブシジン酸等がスギ,ヒノキ類の雌雄花の着花を抑制することを見い出した。この中でも効果の大きいウニコナゾールPについて,さらに詳しく調べるために,2年生ボカスギサシキクローン及び2年生ヒノキ実生苗木(丹沢8家系)を用い,ウニコナゾールP(5~1000ppm)の水溶液を土壌施用し,一週間後にジベレリン(GA3,100ppm)水溶液を葉面散布処理し着花数を調べた。その結果,スギ,ヒノキのいずれも5ppmの低濃度でも雌・雄花のいずれも着花が著しく抑制された(図1,3)。前の実験の逆の効果を確認するために,ジベレリン処理の一週間後にウニコナゾールPを与えた結果を(図2,4)に示す。この図から,着花抑制剤の処理時期は花芽分化前が適当であることが分かった。これらの結果をもとに,幼台木に対する着花抑制の実用化試験として,屋外に植栽されている12年生のサシキクロンを用い,スギ・ヒノキの いずれも500ppmの乳剤を1本当り1000cc樹幹注入処理した。また土壌施用処理は0.04%粒剤を1本当り500g根元に与えた。その結果,いずれの処理方法によってもスギ・ヒノキの幼台木に対し著しい着花抑制効果のあることが確認された(口絵)。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | きく 台木 薬剤 |