森林の水流出調節機能の向上技術の開発

タイトル 森林の水流出調節機能の向上技術の開発
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 細田育広水流出管理研究室 藤枝基久
森林環境部水資源保全研究室 志水俊夫
坪山良夫
発行年度 1993
背景・ねらい 河川水量の安定的確保には,水源山地に位置する森林の水源かん養機能を向上させることが必要である。森林が水流出に関与しているのは,樹冠遮断や蒸散など蒸発散機構と,保水性に富む表層土壌の形成である。時間スケールを短く考えた場合,技術的には前者の森林からの水損失量を軽減する施業管理技術の開発がより有効である。本課題では,森林施業が水文特性に与える影響を明らかにし,森林の水流出調節機能を向上させる技術に資することを目的とした。
成果の内容・特徴 森林施業が水収支,水流出に及ぼす影響を明らかにするため,モデル林分における間伐試験と流域単位の施業試験を行った。間伐試験ではヒノキ人工林において本数換算で40%,胸高断面積換算で43%の間伐を行った。年降水量に占める樹冠通過雨量,樹幹流下量の割合は,間伐前がそれぞれ77.7%と5.2%,間伐後が86.1%と4.3%となった。樹冠遮断率の減少は約44%と見積もられ間伐率とほぼ一致した。間伐前のデータによる回帰式を利用して間伐をしなかった場合の樹冠遮断量の予測値を求め,間伐後の実測値と比較すると,樹冠通過雨量が168.6mm増加し,樹幹流下量が29.5mm滅少した。この結果,樹冠遮断員はl39.1mm減少したが,この値は間伐前の樹冠遮断量のおよそ40%に相当する(図1)。流域試験では面積6.48haの森林小流域を等高線にそって帯状に一列おきに伐採を行った。帯状伐採後は伐採前に比べて,期間流出量に占める平,低,渇水流出量の割合が大きくなった(図2)。温暖期の蒸発散量は帯伏伐採によって平均で66.3mm滅少した。これは皆伐による滅少量の43%に相当する。直接流出員は帯状伐採により流出率で6~13%の増加が認められた(図3)。また一連続降水景が100mmを超える場合のピーク比流量は伐採前に比べてl.16~1.41倍となった。これらの値は皆伐試験による値と比較して小さな値である。森林の量的な変化により流出量を調節することは,高水時の流量の増加を許容範囲内に抑え,いかに低水時の利用水量を増加させることができるかということである(図4)。本研究から,間伐などの保育,帯状伐採などの非皆伐施業は水保全機能の向上にとって望ましい森林管理技術であることが示された。

図表1 212344-1.gif
図表2 212344-2.gif
図表3 212344-3.gif
図表4 212344-4.jpg
カテゴリ 管理技術

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