木製擁壁の特性と評価

タイトル 木製擁壁の特性と評価
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 市原恒一
生産技術部林道研究室 梅田修史
大川畑修
澤口勇椎
発行年度 1993
背景・ねらい 木製土留め擁壁は,その施工性,経済性の良さから林道・作業道の保全に用いられてきたが,近年は,景観保全をも考慮した工法として施工されることが多くなっている。しかし,設計・施工規準がなく,これまで経験的に施工されて来たのが現状である。ここでは,設計法を確立するための基礎資料を得る口的で,のり壁面工と控え材とからなるタイプの木製擁壁を対象にした模型実験と解析結果から,土留めの機構について検討した。
成果の内容・特徴 木製擁壁の土留め効果は,予想される切上斜面の破壊形態に影響される。図1に,粘土,砂質土の均質土からなる切土斜面を仮定し,フェレニウス法により安全率Fs-1.00付近になる滑り円弧を示す。滑り円弧の深さは,砂質土(d2)では小さく,粘土(dl)ではd2の3倍になっている。のり先部の点線は,高さ2mの木製擁壁で,右に拡大図を示す。砂質土では,滑り円弧が浅いため控え材と円弧の交わる点数が粘土と比べ多くなり,滑りに対する抵抗は大きくなる。このような滑り円弧の発生位置の違いによる木製擁壁の支持力の大小,のり壁面工の挙動等について模型実験から検討した。図2は,フロント載荷(FL)とバック載荷(BL)(前者は,荷垂が控え材上部に掛かるが,後者は控え材から外れる)の場合に発生した滑り面とのり壁面工の挙動を示す。FLによる滑り面が砂質土,BLが粘土にほぼ相当する。また,図3は,加圧板押し込み量と圧力(支持力)との関係を示す。FLの支持力は,BLの約2倍あり,ピークの出現も押し込み量が15mm(BL),35mm(FL)のときであり,破壊モードが両者で異なっている。図2ののり壁面の挙動から,FLは,転倒破壊,BLは滑動破壊と見なされる。コンクリート製擁壁が躯匝体重量で土の変形を押さえて斜面の安定を図るのに対し,木製擁壁では,控え材部を含む土塊の変形に伴って受動的に控え材に発生する引張り力,せん断抵抗力,曲げ抵抗力等で安定を図る点に両者の違いがある。従って,ある程度の変形が許容される砂質土の切土斜面には有効な工法であり,設計では,変形を考慮し,発生するであろう控え材の引張り力等を想定した安定計算を行う必要がある。

図表1 212347-1.gif
図表2 212347-2.gif
図表3 212347-3.gif
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