全天空写真を用いた林内気温の推定

タイトル 全天空写真を用いた林内気温の推定
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 東北支所防災研究室  齋藤武史北海道支所防災研究室 坂本知己
発行年度 1993
背景・ねらい 森林の内部では気温の変化が緩和され,よく晴れた日の早朝には林内の方が林外よりも暖かく,日中には林内の方が林外よりも涼しいことが多い。しかし,林相の差異(樹冠の疎密)と気温緩和作用との定量的関係は解明されておらず,様々な林分における林内気温の推定,予測は困難であった。森林の気温緩和作用を,環境保全や気象被害の防止に有効に利用するためには,林相の差異と林内気温との関係を把握することが必要である。そのため,ここでは林内で撮影した全天空写真を用いて林相の差異を定量的に評価し,簡便に林内気温を測定する手法を開発した。
成果の内容・特徴 森林の内部に魚眼レンズを装着したカメラを持ち込み,レンズを鉛直上方に向けて撮影すると,写真1のような全天空写真を撮ることができる。円形に写った写真画面の視野全体に対する白の部分(幹,枝,葉以外の部分)の面積率(%)を開空度と呼び,この値の大小によって樹冠の疎密を定量的に評価することができる。北海道支所実験林内の数樹種の林分で開空度と林内の日最高気温,日平均気温,日最低気温とを測定したところ,図1に示すような直線的な関係が得られた。開空度をX,林内気温(日最高,日平均,日最低 )をYとおいて回帰式
Y=a・X+b
を求めると,開空度から簡便に林内気温(日最高,日平均,日最低 )を推定する式が得られる。
これらの結果と,標高による気温減率(℃/m)及びアメダス(気象庁の地域気象観測システム )のデータとを用いて,任意地点における林内気温を推定する式を作成した。
北海道の日高山脈の標高720m~1260mに位置する10地点(図2)で開空度と林内気温とを観測し,推定式を当てはめて,推定値と実測値との比較を行ったところ,図3に示すような良好な結果が得られた。本推定式を利用すれば,現地で撮影した全天空写真と近傍のアメダスのデータとから簡便に任意地点の林内気温を推定するとができるほか,さらに,伐採,植栽等によって林相(開空度)が変化した場合の林内気温の予測を行うことも可能である。

図表1 212350-1.gif
図表2 212350-2.gif
図表3 212350-3.gif
図表4 212350-4.gif
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