小面積,造林地における殺鼠剤の周辺薬剤散布幅について

タイトル 小面積,造林地における殺鼠剤の周辺薬剤散布幅について
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 斎藤 隆
川路則友
北海道支所鳥獣研究室 中津 篤
発行年度 1993
背景・ねらい 造林木を食害する北海道の主要有害野生生物であるエゾヤチネズミClethrionomys rufocanus bedforidiaeに対する防除方法として,造林地とその周辺30m以内のヘリコプターによる殺鼠剤の空中散布法が拡大造林施業以降取り入れられている。しかし,北海道の造林地では天然林施業への移行により造林地の小面積化が急速に進みつつあり,現在の防除法では造林地への新たな個体の侵人が心配されている。そこで,造林地の周辺何mまで防除すれば造林地内に本種が侵人してこれなくなるか,その周辺散布幅の具体的数値を得るための基礎調査を行った。
成果の内容・特徴 主にクマイザサを林床植生とする天然林で,殺鼠剤の散布時期に当たる晩秋から初冬にかけてエゾヤチネズミを除去後の周辺からの侵人と回復過程を5年間(1988~1992年)調査した(図1)。中央部(0.6ha)のエゾヤチネズミを除去した後,約1カ月の間に周辺部から侵入した標識個体(侵入集団)は5年問で82頭(雌38,雄44)であった。最短及び最長侵入直線距離の平均は,それぞれ雌72.0m,雄87.7m(雌雄平均80.4m)と,雌90.0m,雄110.6m(同平均101.1m)であった。最短・最長距離とも雄の方が雌に比べて長く,とくに最艮距離では有意に長かった(図2)。除去集団55頭と侵入集団82頭の齢別変化をみると,雌雄とも亜成体(体重21~25gの若い個体)が最も多く侵入した(図3)。亜成体の侵入が多い原因としては,除去直前の行動距離が幼体(体重20g以下)や成体(体重26g以上)に比べて長かったことから,亜成体が母親の行動圏から離れ自らの独立した行動圏を確立する過程にあるためではないかと考えられた。
除去後1~2週間と3~4週間の回復率はともに高く,雌雄平均で100%を上回った(図4)。このように,回復率が高くしかも回復期間が短いことは本種の特徴と考えられ,除去することがかえって移動・分散を刺激し,侵入を促進していると思われた。侵入集団82頭の侵入前捕獲地点から造林地(中央部)までの最短直線距離は雌雄平均61.7mであった(図5)。従って,この結果と上述の最長侵入直線距離の結果(雌雄平均101.1m)から考え合わせると,周辺からの新たな個体の侵入を防いで冬期間の造林木被害を防止するためには,少なくとも現在の周辺散布幅(30m)の2~3倍駆除する必要があると思われた。

図表1 212351-1.gif
図表2 212351-2.gif
図表3 212351-3.gif
図表4 212351-4.gif
図表5 212351-5.gif
カテゴリ 病害虫 防除 薬剤

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