風倒,伐採等の撹乱要因別の更新実態と問題点の解明

タイトル 風倒,伐採等の撹乱要因別の更新実態と問題点の解明
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 生産技術部更新機構研究室  桜井尚武
田中信行元生産技術部更新機構研究室 谷本丈夫(現宇都宮大学)
飯田滋生
発行年度 1993
背景・ねらい 亜高山帯林は寒冷,多雪等の厳しい環境下にあるため,自然撹乱や伐採等の人為撹乱に対して抵抗力が弱い。本課題では,このような森林における撹乱後の回復機構解明のため,1966年に帯状皆伐を行った亜高山帯林における更新実態を解析し問題点を検討を行った。これらの調査を行ったのは1991年から1993年にかけてである。
成果の内容・特徴 試験地は奥秩父国師岳東俣の南西向き斜面(標高2,200m)である。原植生は直径40~50cm,樹高17~20mのコメツガを優占種とし,コケ型の林床にシラベ・アオモリトドマツやコメツガの稚樹が多い林齢300年ほどの林分である(写真1)。この林分の上層木の伐採収穫後,林床に豊富にあったシラベ・アオモリトドマツやコメツガの稚樹の60~70%は伐採翌年に枯れてしまったこと,ダケカンバの芽生えが多量に発生したことはすでに明らかにされている。枯死原因は伐採に伴う地表の撹乱と急激な疎開による環境の激変である。伐採25年後の現在,伐採面には直径4~6cm,樹高5~6m程のダケカンバが純林状に成立している(写真2)。伐採帯を横切り等高線沿いに設定した7m幅のベルトを5mごとに区分けして,5m置きにその区画に成立する1.3m未満の樹種別の稚樹数を保残帯の様子の模式図とともに図1に示す。撹乱の激しかった伐採帯ではコメツガ稚樹が比較的多い。林縁部では稚樹数が伐採帯や林内よりも多く,撹乱の影響が少なくなる保残帯内部に行くにつれシラベ・アオモリトドマツの混交割合が増す。これらの平均稚樹高は林縁で高いと期待されたが顕著ではなかった。伐採後25年を経ても,伐採帯では成熟林構成種であるコメツガやシラベ・アオモリトドマツの稚樹の成立と生育は旺盛ではない,伐採帯ではダケカンバ林ができ上がっているがまだ鉱物質土壌の露出が見られるなど,森林の再生や林地保全上の大きな問題が残されている。これに対して,撹乱程度の低かった林縁部では多量の稚樹の旺盛な生育が見られる(写真3)。このように,亜高山帯林の伐採に伴う林床の撹乱による影響は更新林分の組成に長期にわたる大きな影響を与えることが明らかとなった。

図表1 212355-1.jpg
図表2 212355-2.jpg
図表3 212355-3.gif
図表4 212355-4.jpg
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