タイトル | 竹林生態系の物質収支 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
伊東宏樹 加茂浩一 関西支所造林研究室 井鷺裕司 清野嘉之 |
発行年度 | 1993 |
背景・ねらい | 竹林は地下茎によって連結され,肥大成長を行わない稈,そしてタケノコによる稈の更新等,一般の森林にはみられない特徴を持っている。これらの点は林分から継統的に収穫を行う場合には極めて有利な性質であるといえる。しかしながら,森林生態系レベルでの物質収支から竹林生態系の特性を評価した報告はなく,合理的な管理指針の策定のためにはそのような基礎研究が必要である。そのような知見を得るために,マダケ林に固定調査地を設定し,林分の現存量,リターフォール量,土壌呼吸量,稈の再生量と枯死量,葉,枝,稈の呼吸量等を測定し,群落全体の物質収支を明らかにした。 マダケの葉の呼吸速度は,気温の上昇に対して指数関数的に上昇した(図1)。マダケの稈の呼吸活性はこれに比べるとやや複雑で,加齢という要因を考慮する必要があった(図1)。マダケの植物体を葉,枝,稈,地下部に,更に土壌をO層と鉱質土壌のコンパートメントに分け,各コンパートメント内の炭素の蓄積量とコンパートメント間の炭素の移動量を上記の測定結果からまとめた(図2)。このようなはタケ群落では初めてのものであるが,一般の森林生態系においても,一ケ所の生態系で現存量や生産量,循環量を同時に測定し,この様な図をまとめあげた例は少ない。そのため,タケ群落内の炭素循環の特異性を比較・考察するには図2の様な測定を一般の森林生態系においても蓄積してゆく必要がある。タケ群落では一般にタケノコの生産量が著しく年変動をすることが知られているが(図3),そのような年変動パターンも,本課題のに基づく群落レベルでの物質収支モデルから再現することができた(図4)。また,集約的な管理の行われている竹林ではタケノコ生産量の年変動が放置状態にある竹林のものよりも小さいという,従来から知られている事実を支持する解析結果もモデルから得られ,群落レベルで物質収支特性を明らかにしていくことが竹林生態系を理解し,よりよい管理指針を得るために有効な研究アプローチである事が示された。 |
成果の内容・特徴 | マダケの葉の呼吸速度は,気温の上昇に対して指数関数的に上昇した(図1)。マダケの稈の呼吸活性はこれに比べるとやや複雑で,加齢という要因を考慮する必要があった(図1)。マダケの植物体を葉,枝,稈,地下部に,更に土壌をO層と鉱質土壌のコンパートメントに分け,各コンパートメント内の炭素の蓄積量とコンパートメント間の炭素の移動量を上記の測定結果からまとめた(図2)。このような成果はタケ群落では初めてのものであるが,一般の森林生態系においても,一ケ所の生態系で現存量や生産量,循環量を同時に測定し,この様な図をまとめあげた例は少ない。そのため,タケ群落内の炭素循環の特異性を比較・考察するには図2の様な測定を一般の森林生態系においても蓄積してゆく必要がある。タケ群落では一般にタケノコの生産量が著しく年変動をすることが知られているが(図3),そのような年変動パターンも,本課題の成果に基づく群落レベルでの物質収支モデルから再現することができた(図4)。また,集約的な管理の行われている竹林ではタケノコ生産量の年変動が放置状態にある竹林のものよりも小さいという,従来から知られている事実を支持する解析結果もモデルから得られ,群落レベルで物質収支特性を明らかにしていくことが竹林生態系を理解し,よりよい管理指針を得るために有効な研究アプローチである事が示された。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | たけのこ 炭素循環 |