温暖少雨地帯における林況変化が流出に及ぼす影響

タイトル 温暖少雨地帯における林況変化が流出に及ぼす影響
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 阿部敏夫
関西支所防災研究室 服部重昭
玉井幸治
後藤義明
発行年度 1993
背景・ねらい 瀬戸内沿岸の温暖少雨地帯では,森林の水保全機能の向上に対する期待は依然として強く,林況と水流出の関係についての定量的評価は,今日でも緊要な課題である。岡山試験地の南谷流域では,1980年頃に発生した松くい虫により流域のクロマツが枯損し,落葉樹を優占種とする広葉樹林へと変化した。そこで,このような林況変化が流域の水流出特性と水収支に与えた影響を,過去の長期データと比較しながら実態的に解明した。
成果の内容・特徴 今回,南谷で発生した林況変化を便宜的にⅡ期(クロマツ林期),Ⅲ期(枯損影響期),Ⅳ期(広葉樹林期)の3期間に分けて,各期間の水収支を整理した(表1)。表中には,試験地開設当初のアカマツ林期(Ⅰ期)の水収支も合わせて示した。クロマツが繁茂していたⅡ期には,水流出量は南谷より北谷の方が大きいが,クロマツが枯損したⅢ期になると逆転し,南谷の方が大きくなった。また,南谷がマツ林であったⅠ,Ⅱ期と広葉樹林に変わったⅣ期の流出量を比較すると,降水量に大きな差がないので,Ⅳ期の方が大きいことが分かる。これらのことは,図1に示した流出特性からも確認することができた。すなわち,広葉樹林期には,降雨時に発生するピーク流量と無降雨時の地下水流出量がともにクロマツ林期より増加した。そこで示したクロマツ林から落葉広葉樹林への林況変化に伴う水流出量の増加は,土壌層に目立った変化がないとみなされるので,林地からの蒸発散量の減少に起因すると考えることができる。そこで,樹種による蒸発散量の違いを知るため,短期水収支法により南谷の蒸発散量の季節変化を比較した。図2に見られるように,3樹種の季節変化のパターンはおおむね一致するが,落葉広葉樹林は落葉期に蒸発散量が小さくなる傾向が認められた。このことが,広葉樹林化に伴う水流出量の増大に寄与していると考えられる。しかし,広葉樹林の林齢,立木密度などの林分条件がマツ林期と異なるため,定量的な評価は今後の林分構造の推移を踏まえながら行う必要がある。

図表1 212358-1.gif
図表2 212358-2.gif
図表3 212358-3.gif
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