塩素を用いない製紙用パルプ法の開発

タイトル 塩素を用いない製紙用パルプ法の開発
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 修二
真柄謙吾成分利用科 島田謹爾
富村洋一
木材化工部木材化学研究室 細谷
発行年度 1993
背景・ねらい 高級紙の原料となるクラフトパルプの漂白には,現在大量の塩素が使用されている。そのため漂白過程でパルプ中のリグニンから生成するダイオキシン等の有機塩素化合物が河川や海域の環境を汚染し,大きな社会問題となっている。国際的にもパルプ廃液による環境汚染の防止に対する要請が高まっている。本研究はこのような要請に答えて,塩素以外の漂白剤を使うことによって,毒性の強い化合物を排出しない新しい無公害の化学パルプ漂白法を開発することを目的としている。
成果の内容・特徴 クラフトパルプの着色原因物質であるパルプ中のリグニンを酵素を用いて単離し,その構造解析を行った結果,図1に示すようなリグニンと炭水化物の化学結合がクラフトパルプの難漂白性の原因であることが分かった。そこで,この化学結合を非塩素系の試薬によって開裂させ,効率的にパルプ中のリグニンを除去する方法を検討した。まず,パルプから単離したリグニンを用いて,その分解反応を検討した結果,酢酸に少量の塩酸を含む反応液がリグニンを分解し低分子化することが分かった。また,図1に示す構造のモデル物質を合成し酢酸で反応させたところ,リグニンと炭水化物の結合が加水分解的に開裂することが分かった。次にこの反応を用いて実際のクラフトパルプを漂白したところ,パルブ中のリグニン量は塩素漂白と同等程度まで低下した。しかしながら,紙の強度の指標となるパルプ粘度が大きく低下してしまい,パルプ粘度を実用的な範囲に収めると,パルブ中のリグニンの半分以上を除去することは不可能であった。そこで,加水分解反応に酸化反応を併用する目的で,種々の酸化剤の添加を検討した。検討した多くの添加剤の中で,硝酸ナトリウムが非常によい結果を与えた。パルプ粘度を英用的なレベルに保ちながら塩素漂白と同等の漂白効果を与えた。次に,工業的な応用を考慮して,高価な有機溶媒の代わりに安価な希硫酸を用いることを検討した。硫酸濃度をコントロールすることによって,酢酸の場合よりもむしろよい結果を得ることができた。ブナクラフトパルプの漂白結果の1例を塩素漂白と比較して表1に示す。

図表1 212365-1.gif
図表2 212365-2.gif
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