タイトル |
RFLP分析を利用したスギ連鎖地図の作製 |
担当機関 |
森林総合研究所 |
研究期間 |
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研究担当者 |
生物機能開発部遺伝子発現研究室 向井 譲
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発行年度 |
1993 |
背景・ねらい |
連鎖地図は遺伝育種研究の基礎となる垂要なものである。永年性の林木では早期検定に利用できるためその重要性は特に大きい。連鎖地図作製には多数の遺伝マーカーが必要である。従来,形態形質やアイソザイムが遣伝マーカーとして利用されてきた。しかし,最も集中的に研究が行われてきたスギでさえ,利用できる遺伝マーカーが少ないため,連鎖地図は作製されていない。一方,短期間に多数の遺伝マーカーが得られるDNA制限酵素断片艮多型(RFLP)は,ヒトなど多くの生物で連鎖地図作製に利用されている。そこで,RFLP分析を利用してスギの連鎖地図の作製を試みた。
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成果の内容・特徴 |
連鎖地図作製用の遣伝マーカーを探索するため,スギのゲノムDNA及びcDNAをクローン化した。クローン化したDNAの中からオキノヤマスギとクモトオシの間でRFLPを示すDNAクローン(RFLPマーカー)を270個探索した。オキノヤマスギとクモトオシは心材色の遺伝分析用として交配され,3世代材料(両親,F1及びF2)が育成されている。この3世代材料を用いて上記RFLPマーカーの遺伝分析を行ったところ,128個のRFLPマーカーがF2で分離した(図1)。任意増幅DNA多型(RAPD)マーカー33個,アイソザイムマーカー2個及び形態形質(倭性)マーカー1個についても同時に解析した。合計164個のマーカーにおける分離データの連鎖解析を行い,145個の連鎖するマーカーで構成される20個の連鎖群を同定した。このうち13個の連鎖群を構成ずる91個のマーカーについては地図上の位置が確定できた(図2)。連鎖地図作製に利用したクモトオシ×オキノヤマスギの3世代材料では,今回マップされた形態形質(矮性)以外に,有用形質である心材色や着花性も分離する。このため,連鎖地図はこれらの有用形質の早期検定に利用できる。また,ヒトゲノム,イネゲノムなどのゲノムプロジェクトでは,RFLP分折で作製した連鎖地図がゲノム研究の起点として位置づけられている。将来,スギのゲノム研究が行われる場合には,今回作製された連鎖地図がその出発点として利用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
育種
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