タイトル | 成長制御活用を持つオリゴ糖 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究担当者 |
掛川弘一 技重有祐 生物機能開発部樹木生化学研究室 石井 忠 |
発行年度 | 1993 |
背景・ねらい | 植物は動物と違って細胞が細胞壁に囲まれている。細胞壁は細胞の形態を保持する単なる壁のようなものと長い間考えられてきたが,近年植物の成長を制御したり,病害虫や病原微生物の侵入を防御したりするなど重要な役割を担っていることが明らかにされてきた。しかし,成長制御に関与する細胞壁の構造や役割についてはまだ不明な点が多い。樹木の成長を分子レベルで研究するためには,細胞壁の構造と機能の解明が重要である。本研究では成長制御に関与する細胞壁成分の検索とその構造解析さらに作用機構について検討した。 |
成果の内容・特徴 | 成長中の植物細胞は多糖類と少量の糖タンパク質から成る一次壁と呼ばれる薄い細胞壁に囲まれている。細胞壁中には植物の成長を制御する細胞壁成分(オリゴ糖など)が存在すると考えられるが,これまでに存在が証明されたオリゴ糖は数例で,その作用機構はほとんど研究されていない。 成長の盛んな木本植物材料としてモウソウチクのタケノコを選び,タケノコ細胞壁を酵素加水分解した。酵素加水分解物をフェノール酸-糖複合体と糖のみから成る部分に分画し,それぞれをイネラミナジョイントアッセイに供した。フェノール酸-糖複合体がイネの成長を阻害したので,これらの混合物の中から活性を持つ化合物を単離・精製した。フェルラ酸-アラビノキシラン3糖及び4糖(フェルロイルオリゴ糖)が生理活性をもつオリゴ糖であることが分かった(図1)。 フェルロイルオリゴ糖の作用機構を調べたところ,フェルラ酸残基はフェルロイルオリゴ糖が生理活性をもつためには必須であり,オリゴ糖部分はこの活性を高めるのに重要な働きをしていることが分かった(表1)。イネラミナジョイントアッセイは感度が低く,検定に多量のオリゴ糖を必要とするので,感度の高い改良点滴法による生物検定を行った。FAXXは植物当たり17nmol以上で成長阻害作用を示した(表2)。 双子葉植物の細胞壁から3つのフェルラ酸を含むオリゴ糖を単離・同定した(図2)。これらはアラビナンやガラクタンに結合したフェルラ酸残基に由来する。これらのフェルロイルオリゴ糖もFAXXと同様,成長制御活性をもつ。これらの結果からフェルラ酸を含むオリゴ糖は植物ホルモンによって促進される伸長成長を低濃度で阻害する新しい生理活性をもつオリゴ糖であることが証明された。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 害虫 たけのこ |