タイトル | 素材(製材品)の耐火性能 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
上杉 三郎 |
発行年度 | 1994 |
背景・ねらい | 素材の中でスギを対象として耐火性能を評価した。スギで常用される柱(土台、大引きを含む)の寸法は105~135mmであるが、スギが梁(はり)、桁(けた)に使用されることは少ない。欠点のない断面の大きい材(例えば、幅15cm以上、高さ20cm以上の断面を持つ材)を常時準備することは困難で、実際の大断面木材とは集成材を対象としている。そのために製材品の耐火性能を問われることはなかった。ここではスギの新たな用途開発のための基礎資料として、スギの大断面木材の耐火性について燃焼試験、性能評価を行った。 |
成果の内容・特徴 | 鉄筋、鉄骨コンクリート構造物などの耐火性能評価に使用されるJIS A1304「建築構造部分の耐火試験方法」に従って、梁材は中央に荷重(力)を加え、柱材は無荷重で、耐火試験を行った。梁材への荷重は、実際の建物の梁材に加わる荷重より大きいもので、梁材の断面の大きさから求めた。それらは長期または短期の許容応力度に相当する荷重である。評価は材が破壊の発生するまでの時間(耐火時間)で30分間を基準とし、建物を支える構造部材は避難に必要な最低時間の30分内に破壊しないことが求められる。その結果大断面のスギ材に通常の荷重が加わった状態では40分間以上の耐火時間があり、火災に対して安全であると証明された。また、材が燃えて炭になる速さを炭化速度で表すと、スギ材は毎分0.65ミリであるから、安全を考慮すれば毎分0.7ミリと言える。表面は炭化し900℃にも達するが、材内部の温度はゆるやかな上昇である。これは木材の持つ断熱性と表面にできた炭化層が熱と火炎を妨げるからである。比重の大きいベイマツと比較した場合でも、炭化速度の差は小さくなり、大断面材の効果が現れている。 素材は干割れが多くなるから、柱などで燃え込みが大きくなると建物の崩壊につながる恐れがある。これらを背割り加工で溝を持つ材で検証すると、溝部分への燃え込み面積は元の断面に比べて小さく、また、カラマツ柱材では溝幅が6ミリ以下ならば一層安全であると結論できた。実際の干割れ幅は10ミリ以下が多く、V字型に形成されるから、燃え込みは一段と小さくなり、火災に対してより安全となる。 これらのことから、断面の大きいスギ素材(製材品)は30分以上の耐火性能があり、火災に安全な構造材料であると言える。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
カテゴリ | 加工 |