ブナアオシャチホコの個体群動態と密度変動要因の解析

タイトル ブナアオシャチホコの個体群動態と密度変動要因の解析
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 鎌田 直人
五十嵐 豊
発行年度 1994
背景・ねらい ブナ林ではしばしばブナアオシャチホコという蛾の一種(以下、「本種」)が大発生してブナの葉を食いつくす。食害に気象害などが重なるとブナが大量に枯死する例も報告されている。しかし、これまでの研究は、大発生時の生態的観察や飼育実験による発育速度、生活史の記載に限られていた。一連の課題では、個体群生態学的な観点から、本種の密度変動と環境要因との関係を明らかにするための調査や実験を行った。
成果の内容・特徴 3種類の統計手法(ARIMAモデル、スペクトル密度関数、マルコフ過程)によって過去の大発生の記録を解析した結果、8~11年の周期性と地域間の同調性が認められた。大発生する場所もしない場所も密度は同調的に変動した(図1、写真1)。調査期間中の最低密度は0.017頭/㎡(終齢幼虫)、大発生の時の密度は約150頭/㎡(同)であった。大発生する場所に比べると、大発生しない場所では、密度増加期の増加率が小さく、低い密度で減少に転じた。

本種の密度が増加しても鳥の密度は変化しなかったが、鳥の餌メニューに占める本種の割合が増加した。その結果、1~10頭/㎡(終齢幼虫、写真2)までは本種の密度が高いほど鳥による被食率が高くなったが、それ以上の密度では被食率は低下した。甲虫の捕食者クロカタビロオサムシ(写真3)は大発生すると急激に増加したが、大発生が終息するとオサムシも急激に減少した。また、大発生しない場所ではオサムシの増加は認められなかった。大発生後の数世代は本種成虫の体サイズが小型化して蔵卵数が減少するとともに無精卵の割合が増加した。これらは、大発生時の餌不足や密度効果の他に窒素含有率の低下とフェノール類の増加によるブナの誘導防御反応(図2)と親世代からの遺伝が組み合わさったmaternal effectsの結果と考えられた。しかし、大発生しない場合には、一連の変化は起こらなかった。サナギタケ(写真4)は大発生しない場所でも密度依存的な死亡を引き起こし、密度が減少したあとも数年間は高い死亡率を引き起こしていた(図3)。サナギタケが本種の周期的な密度変動を引き起こす主要因と考えられた(表1)。
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