タイトル | 東北地方ブナ林の繁殖鳥類群集の実態と施業の影響 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
鈴木 祥悟 中村 充博 由井 正敏 |
発行年度 | 1994 |
背景・ねらい | 東北地方に広く分布しているブナ林では近年、環境保全的な森林の取り扱いが指向されているが、その際、害虫制御や種子散布等の役割を果たしていると考えられる鳥類がその機能を十分発揮できるような方策をとる必要がある。そのため、 東北地方のブナ林の繁殖鳥類群集の生息密度や組成の実態及び年次変動を明らかにするとともに、施業形態の違いが鳥類群集にどのような影響を与えるかを検討し、施業と調和した保護管理を行っていくうえでの基礎資料とする。 |
成果の内容・特徴 | 図1は、日本各地のブナ天然林の繁殖鳥類群集の類似性をみたものである。東北地方のブナ天然林の繁殖鳥類群集は、基本的にヒガラ、キビタキやシジュウカラが優占する群集構造を示し、全種合計の生息密度は100羽/15ha程度である。 一般に森林性鳥類の繁殖群集は、優占種構成や生息密度に関し年次的に安定していることが知られているが、青森県八甲田地域の4か所のブナ二次林で5年間調査した例でも、各調査区とも優占種はヒガラ、キビタキやシジュウカラで生息密度も50羽/15ha前後で推移した。ブナ林に生息する鳥類の大半は繁殖期には食葉性昆虫などを餌としており、また、ブナの結実的にはブナ種子を餌とするものが多い。しかし、1990年のブナアオシャチホコの大発生やブナの結実量の豊凶といった数年から10年前後の周期で、しかも一年の内でも限られた時期にだけ大量に供給されるような餌資源は繁殖鳥類群集にはあまり影響を与えないと考えられる(図2)。 表は、ブナ天然林を伐採した場合、繁殖鳥類群集がどのように変化するかを示したものである。伐採率が高くなるにつれ生息密度が低くなると同時に樹洞営巣性鳥類の割合が減少し、林緑や疎開した環境を好む鳥類の割合が高くなる。また、ブナ林を皆伐し新植した場合には、植栽後しばらくは下層で活動する鳥類しか生息できなくなる。このため、ブナ林地帯で施業を行う場合、鳥類群集に影響を与えることの少ない方法は弱度の択伐による天然更新であり、その際には、樹洞営巣性鳥類の営巣場所となる樹洞のある木や枯木は、極力保存することが望ましい。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
図表6 | |
カテゴリ | 害虫 繁殖性改善 |