サクラ保存林の花の形態

タイトル サクラ保存林の花の形態
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 横山 敏孝
桂田 ひとし
勝木 俊雄
石井 幸夫
発行年度 1994
背景・ねらい 多摩森林科学園には約250種類(品種及び種)2,000本のサクラを植栽したサクラ保存林がある。奈良・平安時代の名花や天然記念物指定のサクラ、また新しく作られた品種などを全国から収集したものである。これらは研究材料であるとともにサクラの遺伝子保存(ジーンバンク事業)としての役割を持っている。この課題は、花の形態的な特徴を正確に測定し記載して、類縁関係の解明や品種の同定技術の高度化のための基礎資料を得ることを目的に実施した。森林植物の遺伝資源保全のために樹木の類縁関係や特性を解明する研究の一部でもある。
成果の内容・特徴 開花後3日間程度経過した花を1種類につき10花ずつ採取して調査した。調べた形質は、花序、花柄、萼筒、花弁、雄しべ、雌しべについて、それぞれの形、数、大きさ、色など20の形質である。未開花の種類を除いた233種類の花の形態についての測定値を集積できた。

花を観賞するサクラはサクラ亜属サクラ節に分類されるものが主である。花の基本的な形態は、一つの花序に1~4個の花をつけ、花には白~淡紅色の5枚の花弁とl個の雌しべ、25~40本の雄しべがある。

サクラ保存林の品種には花の形態に大きな変異が見られた。花の直径の最大値は53.6mmあり、50mmを越えたものはオオヂョウチン、ミクルマガエシ、アマヤドリであった。最小値は12.6mm(カンヒザクラなど)であった。保存林のサクラの種類の36%が大輪に区分される花をつける。花の色は白色あるいは淡紅色のものが多いが.濃紅紫色のものや特殊なものとしては緑色や黄緑色があった。

花弁の数の最大値は189枚(ツクバネ)であった。100枚以上のものを挙げると、ケンロクエンキクザクラ、キナシチゴザクラ、キクザクラ、フクザクラ、ヒウチダニキクザクラ、ナジマザクラなどがある。花弁数が60枚程度以上のものは菊咲きと呼ばれ、サクラ保存林の種類の6%がこれである。

雄しべの数の最も多いものでは88.7個(オオムラザクラ)あり、一方、まったくないものもある(ヒナギクザクラ)。80個を超えたサクラが3種類あった。雌しべについても、ほとんどないものから最多のものでは20.8個もの雌しべがあった。雌しべの機能が退化した「葉化雌しべ」を持つものが27種類あった。
図表1 212385-1.png
図表2 212385-2.png
図表3 212385-3.png
図表4 212385-4.png
カテゴリ 遺伝資源 さくら 品種

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