マツ材線虫病の発病とマツの水分生理特性との関係

タイトル マツ材線虫病の発病とマツの水分生理特性との関係
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 池田 武文
発行年度 1994
背景・ねらい マツ材線虫病の代表的な症状として木部通水性の低下・停止が知られている。この症状は仮道管でキャビテーションが発生することによると考えられている。そこでキャビテーションの発生をAE(アコースティックエミッション)法で非破壊的に検出し、マツの水分状態との関係を明らかにした。さらに、マツノザイセンチュウの侵入に対する抵抗性マツの組織学的反応から、抵抗性のメカニズムを考察した。
成果の内容・特徴 AE法で検出したキャビテーションは、マツの木部圧ポテンシャルが急激に低下したり、針葉の変色が起こるかなり以前から発生しており、線虫接種前後の同じ木部圧ポテンシャルに対する発生頻度は、接種前に比べて接種後で多かった(図1)。通常、日中に生じたキャビテーションは夜間に回復するが、マツ材線虫病罹病木で発生したキャビテーションは回復することなく蓄積され、最終的に木部の通水機能が完全に停止することが明らかになった。

さらに、抵抗性のマツでもマツノザイセンチュウの侵入に対して次のような影響が見られた。木部の一部がエンボリズムをおこして通水機能を失ったり(写真1)、柔細胞の破壊や変性が起こっていた(写真2)。これらの結果は弱病原性マツノザイセンチュウを感受性マツに接種して生き残った個体で観察された結果と類似していた。つまり、マツノザイセンチュウが侵入しても枯れないマツには次の三つの現象が共通して認められることが明らかになった。

  1. 髄を中心とした木部中央部で通水は停止するが、木部周辺では通水阻害は起こらない。
  2. 通水の停止した木部の柔細胞は部分的に変性する。
  3. 通水の停止していない木部の柔細胞と形成層には変化がない。

一方、マツノザイセンチュウの侵入によって枯れたマツでは、木部全体の通水の停止と柔細胞や形成層の変性、破壊が起こっている。これらをまとめると、上述した三つの現象がマツノザイセンチュウの侵入に対するマツの抵抗性の現れであることが明らかになった。
図表1 212390-1.gif
図表2 212390-2.gif
図表3 212390-3.gif
図表4 212390-4.png
図表5 212390-5.png
図表6 212390-6.png
カテゴリ 抵抗性

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