多雪地帯における地すべりの動態

タイトル 多雪地帯における地すべりの動態
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 松浦 純生
浅野 志穂
岡本 隆
竹内 美次
発行年度 1995
背景・ねらい 日本海側に広範囲に分布する第三紀層地すべり地帯では、積雪と地すべりとの密接な関係が指摘されている。しかし今まで冬期間の厳しい自然環境に阻まれ、地すべりの移動特性やそれにかかわる間隙水圧の変動などの基礎的データはほとんど得られてない。そこで多雪地帯における地すべりの動態を明らかにするため、前橋営林局と共同で新潟県東頸城郡安塚町に試験地を設置し、通年にわたる気象観測や地すべり調査・観測を行った。
成果の内容・特徴 地すべりの動態を解析するためには、地すべり移動を単なる点の移動としてではなく地すべりブロックの移動と変形としてとらえる必要がある。そこで地すべりブロックを27個の三角形要素に分割し(図1)、光波測量により得られた各節点の移動量から三角形要素の主ひずみの大きさと方向を求めた(図2)。その結果、1988年に下部ブロックで観測された部分的な引張及び圧縮ひずみが、時間の経過とともに引張ひずみが上流方向へ、また圧縮ひずみが下流方向にそれぞれ拡大し、全体のひずみ量も著しく増大することが分かった。また、下部ブロック末端では引張りひずみが圧縮ひずみに反転するなど、初期の局所的な変動が全体的な地すべり変動に遷移する過程において、様々な応力の変化を伴うことが分かった。 さらに、積雪期間における間隙水圧の変動や地すべりの移動特性を観測するため、間隙水圧計や孔内多層移動量計を設置し、各種の気象観測とともにコンピュータを用いた自動観測を行った(図3)。その結果、積雪期間とその前後に地すべり地に供給される降雨及び融雪水の実態が明らかになるとともに、間隙水圧についても、積雪初期に低下した間隙水圧が、その後緩やかに上昇し消雪とともに急速に低下するなど、積雪期間における変動特性が明らかになった。また、地すべりの移動速度は積雪初期の積雪層が形成されたり消失する積雪初期に最も大きくなることが観測された。しかし、積雪層が深くなるに従って地すべりの移動速度は小さくなり、多量の融雪水が観測される融雪末期になっても顕著な移動は見られなかった。今まで地すべりの多発時期は融雪期であるとされてきたが、本試験地における観測結果によると積雪初期においても地すべりの移動が無視できないほどに活発化することが明らかとなった。
図表1 212395-1.gif
図表2 212395-2.gif
図表3 212395-3.gif
図表4 212395-4.png
図表5 212395-5.png
図表6 212395-6.png
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