乱流変動法による森林樹冠上と幹空間における潜熱輸送量

タイトル 乱流変動法による森林樹冠上と幹空間における潜熱輸送量
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 大谷 義一
谷 誠
山野井 克己
溝口 康子
河合 英二
岡野 通明
吉武 孝
森澤 猛
発行年度 1995
背景・ねらい 森林群落上の潜熱輸送量は森林の蒸発散量を表すため、国内では主に水文学的な関心から研究が行われてきた。潜熱は、同時に森林群落が放射エネルギーを変換し配分する要素の一つであるため、森林の微気候形成機構の解明にとっても重要な課題である。この研究では、大気の乱流観測を森林群落の樹冠上と幹空間の2高度で実施することにより、従来の観測では不可能だった樹冠層及び下層植生からの潜熱輸送量を、別個に評価することを目的とする。
成果の内容・特徴 観測を行った森林は、森林総合研究所高萩試験地内にある平均樹高約5mのクリ、クヌギ落葉広葉樹人工林で、下層はネザサが比較的密に覆っている。層別刈り取りの結果、林分の葉面積指数(LAI)は6.3と推定された。葉面積密度は、図1のように高さ1.5mを境にそれより上層では林木、下層ではネザサによって占められている。林内に建設された高さ約10mのタワーの7.0m(樹冠上)と1.5m(幹空間)の2高度に超音波風速温度計、赤外線湿度変動計をそれぞれ設置し、毎秒10回のサンプリング速度で風速と気温・湿度の変動を測定した。データを乱流変動法によって解析し、顕熱、潜熱の乱流輸送量を計算した。同時に、群落上で日射量、正味放射量、群落内外の9高度で気温、湿度を観測した。群落内の潜熱収支に関する概念図は、図2のように表される。群落内の潜熱貯留量変化と2高度での潜熱輸送量観測値から、林木の樹冠部分からの蒸散量を求めた。
群落上の観測から、図3に示す樹冠上のエネルギー収支が得られた。樹冠上で観測された顕熱、顕熱輸送量の和は正味放射量とほぼ一致し、日中のボーエン比(顕熱/潜熱)はほぼ1となった。潜熱輸送量の日変化は図4のようになり、最大値は樹冠上で約300Wm-2、幹空間で40Wm-2であった。葉面積の62%は1.5m以下の高度に分布しているにもかかわらず、全蒸発量の約85%は上木からの蒸散によっていた。林内の潜熱貯留量変化が比較的少ないことから、下層植生からの蒸散や地表面からの蒸発によって生じた潜熱は、上木の蒸散によって生じた潜熱とともに樹冠層を通過して、樹冠上へ輸送されていることが明らかとなった。
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図表2 212397-10.png
図表3 212397-2.gif
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カテゴリ くり 輸送

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