タイトル | 水溶性セルロース誘導体の性能評価 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
田中 良平 松井 宏昭 瀬戸山 幸一 |
発行年度 | 1995 |
背景・ねらい | 木質材料等の加工に様々なポリマーが用いられているが、水溶性ポリマーはコーティングなどを水系処理で行う場合には不可欠な構成物質である。この水溶性ポリマーには様々なタイプがあり、加工用材料としてどのような性能を有するか充分に把握する必要がある。ここでは、木材成分の一つセルロースを誘導体化し、水溶性でありながら、部分的に疎水基を有する疎水化ヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)を取り上げ、疎水基を持たない水溶性ポリマー(ヒドロキシエチルセルロース=HEC)と比較することにより、水溶液の物性の評価を行った。 |
成果の内容・特徴 | HMHECはHECに少量の疎水基(長鎖アルキル基)を導入したもので、その水溶液中では疎水基同士の会合により、図1に示す三次元網目構造を形成する。従って、同程度の分子量を持つHECに比べ、著しく高い水溶液粘性を示すことが知られている。この網目構造に対する温度の影響を検討するために、20~60℃の範囲での2%水溶液の粘弾性変化を測定した(図2)。HECと同様に、HMHECも温度上昇により粘弾性の低下がみられる。しかしながら、高温域においてもHMHECは、低温域でのHECより遥かに高い粘弾性を維持している。このことから、HMHECの骨格を形成しているHEC分子同士の絡み合いは、温度上昇により著しく弱くなるが、疎水基同士の会合状態は、高温においても強く維持されることが明らかになった。つまり、HMHECはある程度の高温において使用する場合にも、一定の粘性を保ちうる材料として有用であることが示唆された。一方、疎水基を持つことにより、HMHECはHECに比べて高い界面活性を示す。水性塗料などに増粘剤として水溶性ポリマーを添加する場合、粘性調節と同時に溶液全体を安定化させることが必要である。図3は、塗料パーティクルのモデル物質としての非イオン性界面活性剤ミセルと、HMHECまたはHECの混合水溶液の安定性を示したものである。斜線部分のポリマー濃度・界面活性剤濃度の組み合わせでは、溶液全体が相分離を起こし、不均一な状態になることを示す。HMHECを含む系では、界面活性剤濃度がかなり高くなっても均一相を保つことから、HMHECは水中に分散している疎水表面を有するパーティクル等と相互作用を起こし、系全体が安定化しやすく、増粘効果も上がるであろうことが示唆された。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
図表6 | |
カテゴリ | 加工 |