タイトル | 北海道主要広葉樹のマンガン耐性の解明 |
---|---|
担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
北尾 光俊 森 茂太 丸山 温 |
発行年度 | 1995 |
背景・ねらい | 植物のマンガン過剰害は、酸性土壌の害としてアルミニウム過剰害とともに広く知られている。この害は低温下で促進されるので、北方系森林においても環境の酸性化によって将来的に問題が顕在化するおそれがある。本研究では、マンガンの過剰集積に対する樹木の反応を明らかにするとともに、光合成活性を指標として北海道主要広葉樹のマンガン耐性の評価を試みた。 |
成果の内容・特徴 | シラカンバ、ダケカンバ、ケヤマハンノキ、ハルニレ、イタヤカエデの落葉広葉樹5種の苗について、マンガンを過剰に供した水耕栽培によって人工的にマンガン過剰害を誘導した。いずれの樹種も、高濃度のマンガン処理によって葉に顕著な可視障害が生じ、成長量にも影響が認められた(図1)。可視被害の特徴として、マンガン処理以前に展開していた葉には褐色斑や褐変症状が、マンガン処理後に展開した葉には黄変症状が、それぞれ見られる傾向があった。 シラカンバでは、マンガン過剰集積によって光合成速度が顕著に低下した。光合成過程の光量子収率、カルボキシレーション効率及びRuBP再生能を調べたところ、マンガン過剰集積は主としてカルボキシレーション効率とRuBP再生能に影響を与えること、光化学系が受ける影響はそれらに比べると小さいこと、が明らかになった。通常大気のCO2濃度では、光合成速度は主としてカルボキシレーション効率により制限されるので、マンガン集積によるカルボキシレーション効率の低下が光合成速度および成長に対して大きな影響を与えていると考えられる。 このカルボキシレーション効率を指標としてマンガン集積の影響を樹種間で比較すると、代表的先駆樹種であるシラカンバ、ダケカンバ、ケヤマハンノキでは影響は小さく、遷移の中・後期に出現するハルニレ、イタヤカエデは影響を受けやすいことが分かった(図2)。今後は、マンガン耐性機構についてさらに詳しく調べるとともに、マンガンを排除する働きを持つと予測される根系の役割についても研究を進める必要がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | かえで 水耕栽培 |