山岳地の立地環境変動の植物群落への影響解明

タイトル 山岳地の立地環境変動の植物群落への影響解明
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 田中 信行
垰田 宏
酒井 寿夫
小林 繁男
田中 永晴
小南 裕志
森澤 猛
発行年度 1995
背景・ねらい 地球温暖化は現在の植生帯を高緯度、または、高標高へ押し上げる力となり、山頂部面積の狭い山岳地では高山帯・亜高山帯植生がその成立立地を失う可能性がある。本研究の目的は、環境条件と各種植物群落の関係解析によりその植物群落の成立条件を解明し、気候変化がこの地域の植物群落に及ぼす影響を具体的に推定することである。
成果の内容・特徴 山岳山頂部に成立する雪田植生の成立条件を明らかにするために、笊森山の雪田周辺での消雪過程と植生の植物季節(フェノロジー)について、融雪期に定期観測を行った。気象観測と雪田植物3種の生育過程の調査の結果、種による成長経過の相違が認められた(写真1)。ヒナザクラ、イワイチョウ(写真)は、消雪後の開葉から結実までに、それぞれ約200、300(℃・日)の有効積算温度(深さ5cmの日平均地温により、5℃を越える値の積算値)が、ゼンテイカは開花に至るまでに240~300(℃・日)の有効積算温度が必要である(図1、2、3)。ヒナザクラでは有効積算温度の上昇と共に生育段階も進行するが、イワイチョウの場合は有効積算温度が満たされていても一定の時期にならなければ生育段階が進行せず、日長の影響が優先することが分かった。
植物分布を左右する積雪条件への温度変化の影響を予測するために、新潟県十日町試験地で過去30年間の気象データを用いて、積雪水量と気温との関係を解析した(写真2)。日平均気温と降水量から積雪水量を推定する式を考案し、30年間の積雪水量、気温のデータを用いて各年度の積雪期間について標準誤差が最小になるよう4つのパラメータの最適化を行った。この結果、30年間の積雪水量の推定値と実測値の誤差は3%以下で、信頼性の高い積雪水量の推定が可能になった。この関係式を用いて、北陸低山域で気温変動の積雪量への影響を検討したところ、平均気温が1℃上昇しただけでも、積雪量は非常に小さくなることが明らかになった(図4)。
なお、本研究は環境庁地球環境研究総合推進費(地球温暖化)による。
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カテゴリ いちょう

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