幼齢林流域と壮齢林流域における蒸発散量

タイトル 幼齢林流域と壮齢林流域における蒸発散量
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 村上 茂樹
坪山 良夫
志水 俊夫
発行年度 1996
背景・ねらい 今世紀初め以来、国内外の多くの流域試験地で森林の変化と流域水収支の関係が調べられてきた。しかし、森林の変化による水収支の変化を推定するのは経験則に頼っているのが現状である。そこで本研究では、森林の変化による水収支の変化を物理過程から明らかにすることを目的とした。すなわち、物理過程に基づく蒸発散モデルを幼齢林流域と壮齢林流域に適用し、観測値との比較からその妥当性を確認することにより、森林と気象条件の変化が蒸発散量に及ぼす影響を定量的に評価した。
成果の内容・特徴 森林総合研究所の常陸太田試験地(15.68ha)では、流量観測、樹冠遮断観測、露場での気象観測が行われている。この流域は1919年植栽のスギ・ヒノキ林で覆われていたが、1985~1986年に一部を残して皆伐された。その後1987~1988年に再びスギ・ヒノキが植栽されて今日に至っている(図1)。ここでは、壮齢林全流域の蒸発散量(1981~1985年)、幼齢林部分流域の蒸発散量と壮齢林残存流域の樹冠遮断量(1991~1994年)をそれぞれ観測から求めた(図1)。蒸発散量(ET)は短期水収支法により求め、樹冠遮断量(I)は林内外の雨量の差から算出した。
ET、I及び蒸散量(T)のモデル計算には熱収支的方法(ペンマン・モンテイス式)を用いた。森林パラメータは壮齢林では一定、幼齢林では林齢に応じて変化させた。気象データは現場の露場のものを用い、現場のデータがない期間については、水戸気象台の値から常陸太田の値を推定して用いた。
図2のように、壮齢林残存流域でのIは観測値と計算値とがほぼ一致し、モデルが妥当であることが分かる。図3に月毎のETの観測値と計算値、及び降水量(P)を示した。壮齢林流域、幼齢林流域ともにETの計算値は観測値をほぼ再現している。図3にはTとIの計算値も示してある。I、T、ETの季節変化パターンは各年の気象条件を反映して年毎に異なる。幼齢林流域では冷夏(1993年)によるETの低下と猛暑(1994年)によるETの増加がみられる。図4に壮齢林流域と幼齢林流域の年間水収支の変化を示した。壮齢林流域(林齢62~66年)のETは毎年ほぼ一定で約500~600mmであるが、幼齢林流域(林齢4~7年)では森林の成長に伴って約300mmから約500mmへと単調に増加している。幼齢林流域では、今後も成長によるETの増加が予想される。
図表1 212421-1.gif
図表2 212421-2.gif
図表3 212421-3.gif
図表4 212421-4.gif
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図表6 212421-6.png
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