タイトル | 落葉広葉樹林におけるエネルギー収支の季節変化 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
渡辺 力 大谷 義一 谷 誠 山野井 克己 溝口 康子 岡野 通明 |
発行年度 | 1996 |
背景・ねらい | 大気層を透過してくる日射のエネルギーは地表面に吸収され、地表面温度の上昇や水分の蒸発などに費やされる。このとき、蒸発の少ない砂漠などでは地表面温度が著しく上がり、大気層を下から強く加熱する。一方、活性の高い森林では、日射エネルギーの大部分が蒸発散に費やされるため表面温度が上がらず、結果として大気の加熱が少なくなっている。森林はこのような過程を通して地域の気候を冷涼に保つ働きをしている。このような「気候緩和機能」を定量化するための基礎データを得る目的で、森林におけるエネルギー収支の長期観測を実施している。 |
成果の内容・特徴 | 埼玉県川越市にある森林気象試験地に設置された高さ25mのタワー(写真)に各種測器を取りつけ、1995年7月から昼夜連続の観測を続けている。主な観測項目は、日射、気温、湿度、風速、地温、土壌水分、樹幹温度、顕熱(大気加熱)、潜熱(蒸発に費やされる熱)などである。森林はコナラ、アカシデ、リョウブ、アオハダなどから構成され、群落の平均高は約15mである。 樹冠層上下における日射量の比率やリター量の測定値から、1996年における葉面積の季節変化を推定すると図1のようになる。この森林では、4月下旬~5月上旬に展葉が起こり、7~8月に葉量が最大になった後次第に葉を落とし、12月まで落葉が継続したことが分かる。同じ期間において、群落のアルベード(日射の反射率)は図2のような季節変化を示した。アルベードはエネルギー収支を考える上で重要なファクターであり、いわば森林が受けとるエネルギーの手取を左右する税率に例えられる。図2によれば、この森林のアルベードはおおむね0.1前後であるが、展葉に伴う急激な増大やその後の葉の成熟による緩やかな減少がみられる。また、落葉期(1~3月)には季節進行とともに太陽高度が増加するにつれてアルベードが減少する。図3は日中積算のエネルギー収支を10日間平均して図示したものである。まず、正味放射量(吸収エネルギー)は、梅雨の時期に一時的に減少する以外は夏に大きく冬に小さい正弦的な変化を示す。これが顕熱・潜熱・貯熱の各項目に配分されエネルギーの収支が合うことになる。季節的な推移をみると、冬(落葉期)には潜熱の割合が小さく、結果として正味放射の大部分が顕熱となり、森林が大気を強く加熱するかたちになっている。この状況は展葉とともに急変し、潜熱へのエネルギー配分が大きくなるため、夏(着葉期)には顕熱が小さくなる。このように、落葉樹林が気候に及ぼす影響は季節により異なっている。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
図表6 | ![]() |
図表7 | ![]() |
図表8 | ![]() |
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