スギノアカネトラカミキリの雄性フェロモンを利用した誘引捕獲法

タイトル スギノアカネトラカミキリの雄性フェロモンを利用した誘引捕獲法
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 中牟田 潔
所 雅彦
中島 忠一
W. S. レアル
小野 幹男
中西 通隆
発行年度 1996
背景・ねらい スギノアカネトラカミキリは、その幼虫による食害や、食害孔から侵入する腐朽菌による材内の変色や腐朽のため、材の経済的価値を著しく低下させる重要な穿孔性害虫の一つであり、その防除技術の確立が早急に求められている。メチルフェニルアセテート(図1)を誘引源とするトラップが、このカミキリが花に集まる習性にヒントを得てすでに開発され、実用化されている。一方でこのカミキリの雄が放出し雌を誘引する性フェロモンの化学構造がすでに決定している(図1)。そこで本研究では、メチルフェニルアセテートと性フェロモンを組み合わせたトラップの誘引効果を検証した。
成果の内容・特徴 訪花誘引剤であるメチルフェニルアセテートと性フェロモンを組み合わせた誘引源の誘引効果を調べるために、スギノアカネトラカミキリ成虫の脱出時期に神奈川県内のスギ林にて誘引試験を行った。サンケイ式水盤トラップを地上約5mの高さに設置した。誘引源にはスギノアカネトラカミキリの雄成虫が放出する性フェロモンである(R)-3-ハイドロキシ-2-ヘキサノンと(R)-3-ハイドロキシ-2-オクタノンの混合物100mg、メチルフェニルアセテート40g、及びそれぞれを組み合わせたものを用いた。
スギノアカネトラカミキリ雌成虫は、性フェロモンとメチルフェニルアセテートを誘引源として組み合わせると、メチルフェニルアセテートを単独の誘引源に用いたときに比べ、約2倍多く捕獲された(図2)。また、メチルフェニルアセテート単独の場合は性フェロモン単独の場合の約2倍多くの雌成虫が捕獲された。しかし、雄成虫の場合は異なる誘引源の間で捕獲数に差がみられなかった(図3)。
誘引源としてメチルフェニルアセテートと性フェロモンを組み合わせると、捕獲数が増える原因として以下の理由が考えられる。これまでの観察により、メチルフェニルアセテートに誘引されて来た成虫が、トラップに捕獲されずトラップの近くにいることがしばしば確認されている。このような成虫を最終的に精確にトラップに導くのに、性フェロモンが役に立っており、その結果捕獲される雌成虫が増えたのであろう。
性フェロモンとメチルフェニルアセテートの組み合わせは雌成虫を多く捕獲できるため被害防止技術として大いに期待されるが、今後、捕獲された雌成虫の生理状態、すなわち未交尾かすでに交尾しているか、まだ産卵していないかあるいはすでに産卵しているかなどを明らかにし、スギノアカネトラカミキリの被害防止が可能かどうかをさらに検討する必要がある。
図表1 212424-1.gif
図表2 212424-2.gif
図表3 212424-3.gif
図表4 212424-4.png
図表5 212424-5.png
図表6 212424-6.png
カテゴリ 病害虫 害虫 性フェロモン 防除

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