東北地域におけるブナの結実の豊凶

タイトル 東北地域におけるブナの結実の豊凶
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 正木 隆
大住 克博
鈴木 和次郎
発行年度 1996
背景・ねらい 「ブナの結実の豊作は数年に一度しかなく、また広い範囲で同調する。」古くからこう言われているが、本当にそうなのだろうか?実は、これを実際に調べた例は意外にない。ならば全国に万遍なくちらばる林野庁の各森林事務所で一定の方法で調べれば、ブナの結実実態が簡単に分かりそうではないか。そこで、当研究室では1989年以来、青森営林局、秋田営林局の全森林事務所で調査されている「ブナの結実状況」を集計し、東北地方のブナの結実実態を解析した。ここでは、1989年から1995年までの7年間の結果について概説しようと思う(図1)。
成果の内容・特徴
  1. 豊作の周期
    調査した7年間では、各地域ごとに1~3回の豊作がみられた。例えば津軽半島(a)では、1989、1992、1995年に豊作が観測された。一方、北上山地(b)で豊作が観測されたのは1995年だけであった。このようにブナの豊作の周期は2~7年程度であることが分かった。
  2. 豊作の同調
    調査した7年間では、東北全体で豊作が同調することはなかった。1995年は全国的に日本海側でブナが豊作だったと言われているが、今回の結果からは、秋田県の一部(c)に凶作や無結実の地域があったことが認められる。このように東北全体での同調現象はないようだが、ある範囲内での同調はみられる。しかし、その「範囲」は固定されたものではない。例えば十和田湖の北部(d)では、1989年と1990年で豊作のエリアと凶作のエリアが局所的に分離していたが、1991年の凶作以降はこの二つのエリアは同調している。
  3. 結実予測技術の確立にむけて
    以上のような周期性や同調性は、何によってもたらされているのだろうか?花芽形成時期の気温や降水量との関係を調べてみたが、明確な傾向はみられなかった。おそらく物質生産(これにはもちろん気候が影響する)にからんだブナ特有の花芽形成機構やブナ種子害虫の密度変動などが複合要因となっているのだろう。将来研究が進んでブナの結実予測が可能になれば、伐採などで荒廃したブナ林のリハビリのための育苗用種子の確保や、ブナの実を餌とするツキノワグマなどの野生生物の保全、それらによる農作物への被害回避に有効な情報となる。このブナの結実調査は今年で9年目を迎えるが、このような情報は、長期的に蓄積することで一層価値が高まるので、今後も継続していくことが重要である。
図表1 212433-1.gif
図表2 212433-2.png
図表3 212433-3.png
カテゴリ 育苗 害虫

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