タイトル | 東北タイ造林普及計画における苗木品質の改善 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
遠藤 利明 |
発行年度 | 1996 |
背景・ねらい | 東北タイ造林普及計画(REX)は、森林の消失が特に深刻なタイ東北地方(図1)において、森林再生の推進を目的として、国際協力事業団により実施されている。 タイ東北地方は、5~6か月に及ぶ乾季があり、また、土壌は砂質で、痩せている。このため、立派な森林を育成するには、高温乾燥、貧栄養などの過酷な条件を生き延び、順調に生育できるような、丈夫で健全な苗を育成することが最も大切な技術的課題である。 この研究では、現地の劣悪な育成用土壌への対策、広く用いられている苗の育成方法であるポリバッグ苗の欠陥を補うための育成方法の改善、マルチキャビティコンテナ(育成容器)の導入による根の変形が少ない苗の育成技術の開発などを行い、苗木品質の改善を図った。 |
成果の内容・特徴 | 現地大規模苗畑で育成されているポリバッグ苗(図2)の根系を調べた結果、養水分吸収の部位である細根量が非常に少ないこと、主根がバッグの底で著しく変形していること、側根がポリバッグの内壁に沿って回転する変形がみられ、特に底で著しいことが分かった。 ポリバッグ苗の培土内には、枯死した細根が多くみられ、過湿による「根腐れ」が起きていると推測された。原因は、培土の主材料として使われる現地の土壌の孔隙量が小さく、透水性も劣ることと、ポリバックの地置育成による滞水であると考えられた。このため、現地で豊富に得られるココナツの殻を砕いたものを培地に加え、孔隙量を増し、透水性も向上させる一方、育成床をベンチ式として地表から離し、排水と通気を図る改善を行った(図3)。この結果、細根量が著しく増加し、根系が充実した。また、十分な通気性のある空間に根が到達すると、根の伸長が停止し、分枝が促されるという、「エアプルーニング」(空気根切)の効果も得られた。 苗を円筒形容器で育てた場合、根の伸長が容器の内壁に遮られ、変形する。この変形には、主根が底に到達して蛇行する変形、側根が内壁に沿って回転する変形及び底の縁に沿って、何周も回転し続ける変形がある(図4)。このような根の変形は、植栽後の根の健全な伸長を阻害するとともに、蛇行したまま肥大することによる、塊状の根の形成や、根同士の干渉(こすれ合い)による病害の誘発などの悪影響を及ぼす。従って、容器に達した根の伸長を速やかに止める必要がある。 このため、根の変形を軽減するような育成容器であるマルチキャビティコンテナの利用を検討し、試作品による実験を経て、半乾燥地樹種に適した形状や容量を備えたマルチキャビティコンテナを設計した(図5)。このコンテナは、容器底部を大きな開口として、エアプルーニングにより主根の伸長を止めて変形を防ぐ。また、内壁にリブ(肋骨)と呼ばれる低い壁を垂直に設けて、側根の回転を止め、さらに根を底部開口に導き(図4)、伸長を止めて、分枝を促すものである。これによって育成された苗は、変形が少なく良好に分岐した根系を持ち、生育も良好であった(図7、8)。 |
図表1 | |
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図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
図表6 | |
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図表9 | |
図表10 | |
図表11 | |
図表12 | |
図表13 | |
図表14 | |
図表15 | |
カテゴリ | 乾燥 |