タイトル | わが国森林土壌中に貯留される炭素量の試算 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
太田 誠一 田中 永晴 今矢 明宏 稲垣 善之 藤本 潔 |
発行年度 | 1997 |
背景・ねらい | 森林は大気中の二酸化炭素を吸収・貯留する機能を果たしているが、土壌中の有機炭素もまた森林生態系の炭素プールの中で重要な位置を占めている。しかし一方で、これら土壌中の炭素は人為や環境インパクトに伴って容易に変化する可能性がある。わが国の森林生態系において、将来、土壌炭素プールが森林管理や温暖化などの環境変化に伴ってどのように変動するかを予測し、森林土壌の炭素貯留機能を最大限に発揮させるためには土壌炭素の動態を広域・長期で明らかにすることが必要であり、その基礎として土壌炭素貯留量の推定が必要となっている。本研究では、既往の土壌調査データを収集・整理し、これに基づいてわが国森林土壌における有機炭素貯留量を試算した。 |
成果の内容・特徴 | 昭和38年から42年にかけて全国で実施された「林地土壌生産力研究」の810土壌断面の炭素含量と容積重のデータを用いてわが国森林土壌における炭素貯留量の試算を行った。 土壌型毎の深さ方向積算炭素量は深さの累乗式によって表され(図1)、これによって推定された深さ100cmまでのha当たり炭素貯留量は「適潤性褐色森林土」並びに「乾性褐色森林土」では約200トン、「湿性褐色森林土」ではこれよりやや多く244トンであるのに対し、火山灰母材の「黒色土」では有機物がアルミニウムと結合して安定化するために315トンに達した(図2)。 これら土壌型毎の単位面積当たり炭素貯留量に土壌型毎の面積を乗じて全国の森林土壌中の炭素貯留量を試算した。ただし上記以外の分布面積の小さい土壌型における貯留量については、仮に乾性褐色森林土の単位面積当たり蓄積量の数値を用いて試算を行った。また、各土壌型の分布割合は官民有林で同じと仮定し、全国森林面積に国有林での土壌型面積比率を乗じて算出した。 試算の結果、わが国の森林土壌に貯留される炭素量は全体でおおよそ54億トンと推定され、そのうち70%が褐色森林土、約10%が黒色土で占められていた(図3)。この54億トンという数値はわが国の森林樹木中に蓄えられる炭素11億トンの5倍弱に当たり、またわが国で1年間に消費される化石燃料(炭素として2億9千万トン)の約18年分に相当する。このように、森林土壌は膨大な量の炭素を貯留する機能を果たしていることが明らかになった(図4)。しかし本試算は、限られた地域・点数の情報に基づいており、また土壌型毎の面積や炭素貯留量などに多くの仮定を含んでいるため、今後、精度の向上を図るとともに、地域や土壌母材、植生などの要因と土壌炭素の貯留量や分解性などとの関係を解析することにより、炭素貯留様式に基づいた立地区分を行うことが必要である。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
図表6 | |
図表7 | |
図表8 | |
カテゴリ |