水辺林再生技術の開発

タイトル 水辺林再生技術の開発
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 吉武 孝
島田 和則
岡野 通明
発行年度 1997
背景・ねらい 今日、わが国の自然湖沼やダム湖の水質は全国的に悪化して、窒素(N)やリン(P)の環境基準濃度を上回る湖沼も少なくない。環境庁は、2002年までに全国のダム湖を対象に、NやPについて排水規制する方針である。湖沼の水質悪化に伴い、そこに生息する動植物にも悪影響が出ており、水生の動植物では、絶滅した種もある。そこで、本研究では水中から湛水域までの、湖畔の失われた湿地林の再生を目指した森林造成の技術的可能性について検討した。
成果の内容・特徴 森林総研内の洪水調整池と霞ケ浦湖畔において、カワヤナギとラクウショウの水中での植栽試験を行った。苗木を筏に固定する方法では、両種の連年生育は可能であるが樹体を維持する根が発達せず、樹高の伸長は停滞することが分かった。一方、植栽木の根を保持するための基盤材を導入した浮上式植栽基盤は、写真1のように根系の発達が良好で順調に生育することが明らかになった。さらに、植栽木の成長に伴って基盤が徐々に沈降し、最終的に水底の土壌中に植栽木が根を張って自立することを目指した沈降式植栽基盤(写真2、写真3)を開発した。木製の沈降式植栽基盤は、設置後約7か月で沈降し水底に着底した。植栽したラクウショウは、写真4のように順調に生育した。この基盤を利用することで、熱帯・亜熱帯に成立しているマングローブ林と同様の水中の樹木群落(写真5)を造成することが可能となった。また、図1に示したようにラクウショウの成長量は、アオコの発生しやすい夏期に最も良好で、この時期の植栽基盤の中の水中のN、P濃度は基盤の外の池水より低くなり、富栄養化した水質が浄化されることが分かった。植栽基盤の中にはコイ、フナ、モツゴ(クチボソ)、ヌマチチブ、テナガエビ、ヤゴ、アメリカザリガニ、タニシ、ミズスマシ等多くの魚類や水生動物が生息するようになり、特にモツゴは基盤内で産卵、繁殖した。また、調整池の浮上式植栽基盤上では、カイツブリの営巣が二度あり、また霞ケ浦植栽試験区では、水上に伸長した樹上で、ヤマバトの営巣が2年連続して観察された。

本研究で開発した浮上式または沈降式の植栽基盤を利用して水辺林を造成すれば、水際周辺の衰退した生態系の回復が期待できる。
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カテゴリ 亜熱帯 繁殖性改善

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